freee 3周年 – 小さいビジネスほど強くてカッコいい流れをつくろう

毎年、真夏のジリジリした太陽とにらめっこすると、freeeの開発に着手した3年前を思い出す。カーンと晴れた空を見ながら、強めにエアコンと J-WAVE をかけて、僕と横路はひたすら開発と議論に没頭した。

自宅で開発をしていたので、昼飯以外には外には出ない生活。お決まりのように午後1時に昼飯に出ると、強い日差しと照り返しに、毎日ぶったおれそうになったものだ。

すでに1ヶ月も前となってしまったが、2015年7月9日、freeeは3周年を迎えた。今年は、7月10日に全社で合宿をしていたこともあり、合宿の場でお祝いをした。

そんな3周年という節目として、freeeの第3期を振り返ってみたい。

1. 事業の拡がり

まず、シンプルにプロダクトが増えた1年であった。

主に個人事業主向けの会計ソフトとして立ち上がった会計ソフト freee も、この1年で法人向けでも大きく進化をとげ、200人規模の事業所でも利用されて大きくビジネスを効率化するほど、本格的な会計ソフトとして成長した。これは、細かな設定や使い勝手を強化するだけでなく、経費精算機能・請求書読み取り機能の追加や請求書発行機能の強化し、「バックオフィス最適化」という新しいコンセプト(後述)を実現し始めているなどによる。

2014年10月にはクラウド給与計算ソフト freee の正式版をリリース。給与計算ソフトの非連続的な進化を実現した。開発にあたっては、エンジニア、マーケティング、カスタマーサポート等が一体となってチームをつくり、誰でも簡単に年末調整までこなすことができ、1クリックで給与計算から明細配布までができるプロダクトを世に出すことができた。

2015年6月には、会社設立 freee をリリース。このプロダクトの原案は、昨年の社員合宿(オフサイト)からあがってきたものであるが、確定申告後の次の一手として、全社戦略に合致するものであったことから、すぐにプロジェクトチームを結成し、短期間でのリリースにいたった。リリースは非常に大きな成功を納め、freee はスモールビジネスの誕生を支援し(会社設立)、日常を支援し(経理)、成長を支援する(給与計算)バリューチェーンを構築することができた。(関連記事)

プロダクトラインを拡充することは簡単なことではない。プロダクトや販売方法、カスタマーサポートの複雑化が進むし、戦力が分散するリスクもともなう。僕個人としても、以前のスタートアップの経験から、スタートアップにとっての事業の分散化がどれだけ大きなリスクを伴うかを目の当たりにしてきた。

しかし、そのような困難を乗り越え、プロダクトライン拡充を成功させるにはいくつかのカギがあると考えている。

  1. プロダクトライン間の強いシナジーがあること
  2. プロダクトライン間で提供する共通のストーリーがあること
  3. 組織内に強いカルチャーと信頼関係が存在し、各プロダクト・サービスを担当するチーム間で濃くかつ信頼感の高いコミュニケーションが存在し、全員が組織の提供するサービス全体のことを意識できていること

おそらく、この3つの論点は相互依存的でもあるかもしれないが、これを実現するかたちで、さらにプロダクトラインの拡充を進めていきたいと考えている。会社設立freeeのような新規のアイデアをもっと溜め込み、事業として実現をしていきたい。

また、別の視点から見れば、僕たちは、スモールビジネス向けにクラウドで価値を提供するという視点では完全にフォーカスして、一点もぶれていない。この「スモールビジネス ✕ クラウド」に特化していることは freee の大きな強みでもあるし、この領域の中で、やるべきことは非常に多くあるのだ。

2. 顧客体験を軸にサービス全体としての freee を再構築

freee の当初のビジネスの推進方法は非常にシンプルであった。

  • とにかくいいプロダクト(ソフトウエア)を高速でつくろう。
  • それを知ってもらおう。
  • そして、使ってもらってわからないことがある人には全力でサポートしよう。

これはこれで、少人数で急速に成長するビジネスを支えるには、よいアプローチであったのだろう。しかし、freee にとって昨年度はこれを大きく一変させる年となった。

簡単にいえば、この一年は、単にソフトウエアとしてではなく「サービス全体」として価値あるものを提供したい、という思いのもと、がむしゃらにやってきた一年だった。がむしゃらにやってきたのではあるが、振り返ってみるとそれは、僕達の都合 (供給側の都合)から離れて、顧客体験を軸にソフトウエア・コミュニケーション・人的サービスを再構築するという、とても当たり前のことでもあった。

例えば、一番大きな変化はセールス組織の立ち上げであった。誰でも簡単に使える業務ソフトを目指すfreeeであるが、オンラインだけでは、理解をしてもらえない局面もやはり沢山ある。その中で、顧客ひとりひとりのニーズをしっかりと把握し、freee の導入を価値あるかたちで支援するのがセールスチームのミッションだ。freee のセールス組織を立ち上げていくなかで勇気づけられたのは、導入いただいた際に顧客に非常に喜んでいただけるケースが多いというところであった。まさに、顧客体験を軸に考えると、「freee を知ってもらう」と「freee を使ってもらう」の間にひとつ大きな溝が存在していて、そこに橋をかけるきっかけをつくることができたのだ。

また、顧客体験を軸に考えるともう一つ重要な視点がある。それは、多くの場合、法人においては会計ソフトは税理士さんと一緒に利用されるという事実だ。こちらでも、freeeを利用して顧問先にサービス提供するパートナーである「freee 認定アドバイザー」を増やしていく、というのも顧客体験においてかけるべき大きな橋であった。この一年ではこちらでも大きく進捗があり、1,400を超えるの会計事務所さん等に認定アドバイザーとして登録いただくにいたった。1年間の達成としてはとても大きなものであったが、もちろん、まだまだやるべきことが残されている。

このような橋渡しを、新たなチームを発足し、試行錯誤を繰り返し、サービスとして、事業としての成長を実現してきた1年だ。このようにサービスを充実させることにより、顧客接点からソフトウエアとして改善すべきことが見出され、開発チームがそれを改善していくというサイクルが自律的に行われ始めてもいる。

また、日本に600万あるとされるスモールビジネス向けのサービスを提供する freee としては、このようなサービス拡充もスケーラブルなかたちで行わなければならない。そのためには素早く実行することはもちろんのこと、テクノロジーを活用したり、クリエイティブなアイデアを出していくことが必要で、セールスもマーケティングもビジネス開発もサポートも、「世の中に変革を起こすラボ」のような取り組みをしてきたな、振り返ってみると思える。

今後もさらに、この顧客体験における橋渡しを、さまざまな方法論でうちだしていかなくてはならない。

3. 自分の役割 ⇛ 事業開発から経営へ

3年目の freee と僕の意識を考えてみると、大きく変わったことがひとつある。それは、自分の仕事が事業開発から経営に変わったということだ。

おそらく、最初の起業家の役割とは基本的にはプロダクトなり事業なりを開発することだ。狩人軍団、カウボーイ軍団の中心的存在として大暴れする。Zero to One にはそれが欠かせないだろう。しかし、集団が一定規模を超えると、そうもいってられない。むしろ、ウワサを聞きつけて集まった優秀なメンバー達がどんどん成果を出し、ワクワクするような経験ができるような環境をつくらなくてはいけない。

僕個人としては、そんな転換が強く大きく起こった1年だった。組織カルチャーとか、いろんなものごとのサイクルとか、メンバー全員でより大きなことを成し遂げるための考え方とか、用語の定義とか、それをいかに有効かつ自分たちらしいものにするかをつくっていく。そしてこのような問いも参加型で皆が関わって答えを出していかなくてはならない。皆で議論してブラッシュアップしていった価値基準や、チームミッションをセットして振り返ることなんかは非常に重要なアウトプットだ。

こういったことから、自分の時間の使い方や、興味や関心事、気をつけることなどは非常に大きく変わった一年だった。

4. 新しいコンセプトへの挑戦

これらの大きな変化の1年間で freee は、あらたに2つのコンセプトを打ち出した。

バックオフィス最適化

会計ソフトとして、経理の自動化に取り組んできた freee だが、2014年10月には会計ソフトの枠にとらわれず、バックオフィス業務全体の省力化を実現する「バックオフィス最適化」のコンセプトを打ち出した。受け取った請求書をスキャンして読みこめば、会計ソフトへの記録だけでなく、銀行振り込みまでができる。freee の給与計算を利用すれば、会計 freee にも連動する。従業員の経費精算も freee でできる。freee で簡単に請求書発行と入金管理ができる。これらが、バックオフィス最適化が実現することだ。

単なる会計ソフトの時代は終わった。これから、会計ソフトは業務全体を効率化するものになるのだ。(関連記事)

クラウド完結型社会の実現

これまで、ビジネスのバックオフィスの現場では、どうしても書面でのやりとりが必要になっていた。これは行政の仕組みや法規制によるものが大きかった。例えば、従業員が入社した際には行政に対して多くの書面手続きが必要であるし、領収書や請求書は紙で保存される必要があった。ところが、これらが政府の電子化の政策により大きく変わってくる潮目にある。その中で freee は、クラウド完結型社会の実現というコンセプトを掲げ、これにコミットしている。行政の手続きや、書類の保存などバックオフィスにおけるすべての部分において、 freee からクラウドで完結できる社会の実現である。(関連記事)

この構想のファースト・ステップとして、2015年5月には、日本初となるe-gov API (政府の提供する電子手続きAPI)を利用した「労働保険の電子申告機能」を給与計算 freee上で実現した。給与計算 freee 上で、給与計算をしていれば、数クリックで労働保険の電子申告ができるというものだ。このように、クラウドでさまざまなことを完結させることができれば、生産性は大きく向上する。そしてまた、今年10月より配布が開始されるマイナンバーの導入もこの動きに拍車をかけることが予想され、freee も「マイナンバー管理 freee」の提供を発表している。

現在、日本においては、生産性の向上は非常に大きな課題である。(日本再興戦略 改訂2015においても「生産性革命」は大きな柱となっている) そのための大きなカギが、このバックオフィス最適化とクラウド完結型社会の実現にあると僕達は考えている。そのような大きなコンセプトを打ち出し、その実現へ向けて成果を出し始めることができたことは、この一年の大きな進捗であったように思う。

そしてその次に

freee はクラウド会計ソフトにおいてシェアNo.1のプロダクトとして成長している。しかし、僕達の実現すべきことは、「スモールビジネスに携わるみんなが創造的な活動にフォーカスできる」ことであり、このミッションを追いかけるためには、単に会計ソフトや給与計算ソフトだけでは不十分である。

会計ソフトという、あらゆるビジネスで必要とされる根幹となるシステムを基点に、スモールビジネスにとってのビジネスのプラットフォームとして成長し、大きな価値を提供していくというのが今後の構想だ。これまでにない新しい価値をきっとたくさんうむことができるだろう。

小さなビジネスほど強くてカッコいい。そんな時代をつくるんだ。

さいごに

3周年のお祝いにて、「3つの子魂100まで」という話をした。きっと、これは会社にも言えるということだ。freee の3年目はきっと、これから長く続く新しい価値そして組織の魂をつくるような面白い年になる。

クラウド会計ソフトでのシェア、freeeがNo.1になるまでにした5つのこと – 2014年のまとめ

新年、明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。

(以下、文語にて)

2015年初のブログポストは昨年のまとめとして2014年のfreeeを振り返ってみる。最も大きなマイルストーンは、クラウド会計ソフトにおいて、freeeがシェアNo.1 であるということが確認されたことだ。(デジタルインファクト調べ「クラウド会計ソフトの利用動向調査」より)」

会計ソフトシェア

クラウド会計ソフトのシェア

これが達成できたのはもちろん、freeeを支えていただいている皆様のご支援にもとづくものであり、まずは皆様に大きな感謝を申し上げたい。そして、その背後にどのような動きがあったかをあわせて振り返ってみる。

1.「経理をとにかく簡単にして自動化する」挑戦と進捗

freeeの掲げるミッションは、「スモールビジネスに携わるみんなが創造的な活動にフォーカスできるような環境の実現」であり、そのために、バックオフィスの業務をテクノロジーによって簡便化・自動化していくことを目指している。freeeが最初に実現したことは、「シンプルなビジネスを想定した際に、経理の業務を限りなく自動化し、個人事業主であれば確定申告まで自動で簡単にできる」ということであった。

結果として、2014年2-3月の確定申告においては、freeeで確定申告をしていただいたお客様の51%超が確定申告の作業が2時間以内で終えたということがわかっており、これまでのソリューションでは何日もかけて苦労する方が多い現状を踏まえると大きな進捗があったといえる。

また、昨年には業界初となるチャットサポートの提供も開始し、お客様の疑問点等を素早く適切に解消する体制を整えることができた。もちろん、初の試みであったため、導入初期には必ずしもご期待に添えない場面もあったのではあるが、現在ではチーム体制とノウハウ含め盤石な体制を築くことができた。

スクリーンショット 2015-01-05 21.27.52

さらに、問い合わせが多い部分などを中心に、ユーザーインターフェースの改善も大きく進捗した。昨年の確定申告期以前の freee をご覧になった方は、現在の freee をご覧になってもその差に驚くはずだ。確定申告においてfreeeを利用される方には、申告の時期のみログインして利用される方もいらっしゃるが、最近よく驚きの声やよいフィードバックをいただいている。また、あわせて、iOSとAndroidにおけるモバイル・アプリの提供も開始し、モバイルからでも簡単に経理ができることを目指して日々改良を進めている。

UIの進化

2. 新コンセプト「バックオフィス最適化」とモバイル

昨年11月には、「バックオフィス最適化」という新しいコンセプトを発表した。

freeeが個人事業主の方だけでなく、法人の方からも積極的に利用されるようになってきたことをうけ、単なる「簡単で自動の会計ソフト」という枠を抜け、経理周辺のバックオフィス業務全体を最適化を目指そうとするコンセプトである。もちろん、中小規模の法人での利用を想定したものだ。

例えば、小さな会社における経費精算のプロセスを例にとってみる

  1. 従業員が経費申請フォーム(エクセルなど)に記入する
  2. 従業員がレシート等を紙に貼り、フォームとあわせて経理に提出
  3. 経理担当者や上長が1.と2.を確認して承認
  4. 会計ソフトに精算について記録
  5. 銀行にて各従業員に支払を登録
  6. 会計ソフトに支払った旨を記録

というようなプロセスであった。これをfreeeの経費精算機能を利用すれば、

  1. 従業員がモバイル・アプリやwebからレシートを写真撮影し、経費申請
  2. 経理担当者がfreee上で申請を確認して承認
  3. 各従業員への振込情報を含んだ総合振込ファイルをfreeeからダウンロードして振込

という3つのステップで済むようになる。

経費精算 iPhone経費精算 web

また、小さな会社において、請求書を受け取ったときのフローも考えてみよう

  1. 従業員が請求書を受け取る。内容確認の上、経理に提出。
  2. 経理担当者が内容を確認し、支払管理表(エクセルなど)に入力
  3. あわせて、会計ソフトに「買掛金や未払金」として入力
  4. 支払日に銀行にて振込を登録
  5. 会計ソフトにて買掛金や未払金を消し込み
  6. 支払管理表のステータスを変更

このようなプロセスも、freeeのファイルボックス機能を利用することで下記のように単純化される

  1. 受け取った請求書をスキャンしてfreeeに登録(モバイルから撮影も可能)
  2. freeeのOCR(スキャンした請求書の自動読み取り機能)の補完を利用して、請求内容をfreeeにほぼ自動で登録
  3. 支払日に振込用のファイルをfreeeからダウンロードして支払

ファイルボックスiphoneファイルボックス - 請求書みながら修正

10月には、「クラウド給与計算ソフトfreee」として、freeeの給与計算機能をリリースした。これも同様に従来の業務を考えてみると、

  1. 従業員の情報を人事担当者(や経営者)が取得して記録
  2. 毎月、従業員の勤怠情報を記録(タイムカードなど)
  3. 人事担当者が毎月の勤怠情報を集計
  4. 人事担当者が各従業員の給与額、源泉所得税、社会保険料を計算
  5. 人事担当者が給与明細を作成、印刷、リアルで配布
  6. 経理担当者が銀行から各従業員に支払
  7. 経理担当者が会計ソフトに記録

これをfreeeでは、

  1. 従業員が、自分の情報をfreeeに登録
  2. 従業員が、毎月の勤怠情報を集計
  3. 人事担当者が、ワンクリックで給与明細を作成、オンラインで配布、銀行支払ファイル作成、会計ソフトに記録できる

と大幅にプロセスをカットすることができるのだ。

このように、単に会計ソフトへの記録をラクにするという発想ではなく、経理周辺の業務プロセス自体を大幅に改善し、小さなビジネスのメンバー全員がより効率的に働ける環境をつくろうというコンセプトがfreeeの掲げる「バックオフィス最適化」の趣旨である。

バックオフィス最適化

このコンセプトをしっかり実現するためには、モバイルでの利用を簡便化することが不可欠であり、モバイルのファイルボックス機能(領収書や請求書などの画像ファイルをアップロードし、OCRにて読み取り、取引に紐付けができる機能)や経費精算機能を中心に2014年には大きな進捗があった。

特に、小さなビジネスであればあるほど、多様な働き方をサポートする必要がある。freeeではそのような多様な働き方をサポートするため、モバイルでのユーザビリティについても大きく投資をしている。

3. さらに大きな価値を提供する freee のエコシステム

freeeのミッションは「スモールビジネスに携わるみんなが創造的な活動にフォーカスできる」ようにすることであるが、そのために必要なものすべてを freee が提供できるとは考えていない。経営者にとって、より身近な専門家の知恵やサービスが必要な場合や、部分的に他のツールを利用したい場合なども多くあると考えている。

そんな場合にも freee は他のパートナーやツールとのオープンな連携をサポートするプラットフォームとして活用いただくことで、これまでにない利便性を提供することを目指している。

まず、全国の会計事務所・税理士事務所を対象として、freeeを活用したサービス提供を支援する「freee 認定アドバイザープログラム」では、会計事務所を支援すべく、ほぼ毎日の体制で研修プログラムを実施し、すでに600を超える会計事務所にアドバイザーとして登録をいただいている。

世界一ラクにできる確定申告会社の経理を全自動化する本

クラウド会計ソフトは、会計事務所等外部のアドバイザーとスモールビジネスが共同作業をするのに最適なツールである。場所が離れていてもインターネットを介して同じデータを見ることができるため、コラボレーションが簡単になる、データが即反映されるなどのメリットがある。最近では、「外部のアドバイザーにお願いしている毎月の財務状況のレポートを、freeeを活用することにより早く確定させたい」というニーズが非常に増えている。

また、外部ツールとの連携も、freeeは当初よりオープンなAPIを提供することで積極展開をしているが、2014年には新しく18 の連携も追加し、銀行やクレジットカード明細との連携以外にも幅広い自動化が大きく進捗した。リクルート社のPOSレジアプリ「AirREGI」や、スマホ決済の「square」、Google Apps 連携などは特に好評だが、請求書ソフト、ECプラットフォーム、決済代行、税務ソフト等さまざま連携が広がっている。

連携の図

4. チーム拡大とその舞台裏[l]

一昨年末、freeeのスタッフは12人程度であった。昨年で累計17億円を超える資金調達により積極投資をおこない、2015年開始時点ではスタッフは総勢90名を超える陣容となっている。ソフトウエアとサポートをあわせて freee というサービスであり、このソフトウエア開発を支える開発チームと、お客様に迅速で的確なサポートを提供するカスタマーサポートチームを大きく拡充した。よって、1-3月の会計ソフトの大きな需要期においても盤石な体制でサービスを提供できる体制を整えることができた。

TGIF写真

開発チームは、ゲーム業界などでの経験を磨いた優秀なエンジニアと、業務アプリケーションに造詣の深いエンジニア、グローバルカンパニーのUXデザイナーやデータサイエンティストがチームを組み、高速で新機能追加と改善を果たしてきたことに対して、大きな注目をいただいた。昨年夏には開発者向けの雑誌「WEB+DB PRESS」にて、freeeの開発の舞台裏が特集としても取り上げられた。

WEB+DB PRESS

サポートチームは、経験に秀でたコアメンバーによって運営されており、マイクロソフトやGoogleなどのテクノロジーカンパニーや大手金融機関のサポート体制を構築してきたメンバーや、公認会計士試験合格者や中小企業経理の長い経験を持つメンバーが中心となっている。カスタマーサポートというオペレーションのプロフェッショナルと、経理業務のプロフェッショナルが見事に融合したチームでサービス提供をしている。

サポート集合写真

これらの急拡大においては、意思決定における共通認識をもつことが、組織のチームワークを最大化する上で、非常に重要になる。以前このブログでも書いた価値基準の決定プロセスはメンバーの共通認識を取ることにおいて大きく役に立っている。

このようなチームを築くため、昨年6月には現在の五反田オフィスに引っ越しをした。以前のオフィスの4個分以上のサイズの新オフィスは、全員が顔をあわせる1フロアで、全社ミーティングや外部イベントにも使えるゆったりしたリフレッシュスペースを備える。そしてこの新オフィスは昨年大きく話題も呼んだ。

リフレッシュスペース1 オフィス2

このような急成長を支える裏側には、もちろんクラウドサービスの活用からも恩恵を受けている。会計ソフトや給与計算ソフトの自社利用はもちろんのこと、freeeは何から何までクラウドサービスを利用してできている。カスタマーサポートや採用などにもクラウドを活用することはもちろん、珍しいところでは従業員との契約までクラウドの電子署名を利用している。現在も、freeeには経理や人事の専任がいない体制で事業に望んでいるが、そのような身軽な経営ができるのもこのクラウドサービスのお陰である。新しい考え方を世の中に提案するには、自分たちがまずその考え方の徹底的な実践者にならなければならない。

5. スモールビジネス向けクラウドサービスの活性化

最後は外的要因ともいえるが、freee がリリースされた 2013年3月から2014年の3月にかけて、日本の中小企業におけるクラウドサービス利用率が15%から23%へ 8 ポイントもアップした。(平成25年・平成26年通信利用動向調査より、売上5億円以下の企業対象)

クラウドサービス利用率

これはもちろん freee による直接的なインパクトも含まれるが、日本においてさまざまなジャンルにおけるスモールビジネス向けのクラウドサービスが活況を呈してきていることが大きい。例えば、freee が以前優勝した、スタートアップのデモイベント Launch Pad においても、スモールビジネス向けのクラウドサービスは2年前は freee くらいであったのが、前回の Launch Pad においてはいくつもファイナリストにノミネートされた。

他にも、POSレジ、予約管理、企業支援、マーケティング支援、販売管理などさまざまな分野で急成長のクラウドサービスは多く出てきているし、クラウドストレージなどは急速に普及している、業界全体が大きく活性してきているのだ。

僕が freee を立ち上げるにいたる最も大きな目的は、「日本のスモールビジネスにおけるテクノロジー活用の促進と生産性向上」であったから、freeeがこのようなトレンドをつくる一つのきっかけとなれたかもしれないということは、ビジネスを超えて非常に喜ばしいことだ。

もちろん、こちらのクラウドサービス利用率は米国では59%ともいわれており、日本においてまだまだ成長の余地は大きい。そして、野村総研の調査によれば、日本のスモールビジネスが米国並みにクラウドサービスを活用することで、およそ6兆円もの経済効果があるともいわれている。このような便益を実現すべく、日本の中小企業の生産性向上に貢献できるよう今年も全力をつくしたい。

さいごに

このようなかたちで、皆様に支えられてfreeeは2014年も素晴らしい成長をとげることができた。もちろん、目指していたところで達成できなかったこともある。より、多数のお客様にわかりやすくお使いいただくためには様々な試行錯誤も必要で、その中で様々な施策のすべてが成功する訳ではなかった。ただ、そのような失敗も含め、さまざまなことを学ぶことができたことも2014年のfreeeの大きな収穫であったと思う。

あらためて、freee を昨年支えてくださった皆様に大きな感謝の意を示すとともに、2015年もfreeeがさらに全力で新しい価値の提供に取り組むことを誓いたい。通常はこういった年始のご挨拶では、方針など示すことが通常であると思うが、ひとまずは1-3月の繁忙期に最高のサービスを提供することがもっとも重要で、僕達はそこにフォーカスしていきたいと考えている。

皆様、今年も一年、 freee のよりよいサービス提供につき、忌憚ないご指導およびご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

freeeの組織力を最大化する工夫はトイレから

組織としてもどんどん成長していく freee。去年の今頃は、まだ10人にも満たないメンバーで、ワンルームマンションの1室で事業を運営していたfreee。1年足らずでメンバーは50人を超え、急激に拡大してきた。特に大きかったのが意思決定の問題だ。

「この場合、どうしましょうか」

「◯◯はどっちでいきましょうか」

組織が小さければ、そんな会話は簡単にカジュアルにできるし、僕が決めたり、僕が直接いろいろな意思決定に関与することが簡単だった。ところが優秀なメンバーが揃って、高速でものごとを進められるようになると、そうはいかない。決めるべきことは指数関数的に増えていき、決めないことによるロスが増える。

この問題を解決し、組織力を最大化するには、みんなが素早く意志決定をして物事を進めることが最も重要だ。そして一方で、みんなの意思決定がfreeeらしいということももちろん大事なので、そんなよりどころとして、freeeの価値基準というものをセットした。

実際にこの価値基準が実効性を持つようになるまでには、試行錯誤が必要で、いきなりうまくできた訳ではなかった。ここでは、そんな試行錯誤のプロセスと、そこからの学びを紹介。もちろん、これはまだ完璧ではなくて、引き続き思考錯誤を進めるべきものだと思う。

  • スタートアップらしく全員参加でやることに意味があった
  • キャッチフレーズ化することに強い効果があった
  • 伝える場所はやっぱりトイレが一番いいっぽい

試行錯誤のプロセス

社会人になってから、僕は4つの会社で働いたことがある。いずれの会社にも、すでに経営理念や行動規範や価値基準のようなものがすでに存在していて、特にそれについて疑問にも思ったことがなかった。

今後さらにfreeeチームを拡大していくにあたり、組織のエッセンスをカタチにしておきたいと考え、価値基準をセットしようと考えた僕は、まずなんとなく役員メンバーに僕のまとめた価値基準案のようなものを見せ、フィードバックをもらい、それをチーム全員に共有した。

ところが、これがあんまりうまく浸透しなかった。。。

単純に、言葉として難しすぎて覚えられなかったり、そこに込めた真意がかならずしも理解されていなかったりということがある一方で、例えば「エンジニアのためにあるようにしか見えない」といったように、一部の人にしか関係ない印象も与えてしまっていたようだ。

こうして中途半端な状態になってしまった価値基準を再建すべく、社員合宿のアジェンダのひとつとしてスタートアップらしく全員でこのテーマについて議論してみることにした。グループに分かれて、価値基準について議論をしてみると、「特にみんなに理解されていないポイント」や「皆が誇りに思っている部分」、「逆にみんなが足りていないと思っている部分」が明るみにでてくる。

そのような発見を元に、委員会を結成。「UXは風土そのもの」を掲げる関口さんが座長として取りまとめてくれた。この時点でもう一点、「言葉として、覚えやすく、キャッチーで、意味を連想しやすいものであるかどうかで浸透度に差が出ている」ということも発見し、5つの価値基準の定義付けをこの委員会で作成した後、それぞれの価値基準のキャッチフレーズを全員アイデア出し必須で募集した。

ここででたアイデアを元に、最終の言葉の整理。結果として、下記のようなfreeeの価値基準がセットされた。

freeeの価値基準: 2014年7月改訂版

1. マジで価値ある?: ユーザーにとって本質的に価値があると自身を持って言えることをする。

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当初は固かったこのセンテンスには、「マジで価値ある?」のキャッチフレーズが添えられた。これによりいろいろな場面で、「これってマジで価値あるの?」「スミマセン、これマジで価値ないっす?」という会話が沸き起こるようになり、大幅な改善。

freeeはリリース前に、いろいろとポテンシャルユーザーにヒアリングしたが、「入力が速くできる会計ソフト」へのニーズはあるものの、「入力がいらない会計ソフト」に対してはイマイチ反応がよくなかった。心折れそうになりながらも、「本質的に価値がある」ということをよりどころに全自動のクラウド会計ソフト freee (フリー) としてリリースを敢行したことに大きな意味があった。この「マジで価値ある?」精神を忘れないようにしたい。(さらに略語でmajikachiというのもある)

2. アウトプット思考:まずアウトプットする。アウトプットしながら考え、改善する。

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こちらは当初、「とりあえず、アウトプットすればOK」というようなかたちで浸透してしまった。重要なことは、アウトプットしながら考えるという部分。これまでも、「まず、アウトプットしますか」みたいに語られていたのが、造語として「思考」とお尻につくことで、「では、この件についてはアウトプット思考で行きますか」ときちんと「思考」までが語られるようになって、実際に思考して改善するプロセスまでを意識できるようになった。

freeeの取り組む課題は、複雑で難しい。アウトプット思考で進めなければ、何も産まれない。

3. Hack everything:なんでもハックする。みんなが楽しく生産性をあげられるように。

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不正侵入という意味ではなく、クリエイティブにいろいろなツールなりノウハウを使いこなして楽しく生産性をあげようという意味での「ハック」。社内チャットに仕込まれたボットが開発チームのプロジェクトマネージャーのように振る舞ってくれる仕組みなどが代表的だが、開発プロセスにおいても、カスタマーサポートやマーケティングのプロセスにおいても関係しそうなことを徹底的に勉強してクリエイティブに使いこなす精神は、バックオフィスの自動化をめざすfreeeにとって非常に大事な精神だ。

4. ハイパー目標:「今の自分だけ」では達成できない高い目標をセットする。

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ついつい人は「今の自分」をベースに目標をセットする。常に非連続的成長を求められるスタートアップでは、これではダメ。「自分が成長すればできそう」とか、「チームで協力したり、新しくチームつくればできそう」とか、現在ないリソースも想像して高い目標を立て、それを実現していかなくてはいけない。

これは当初、闇雲に高い目標を立てようという意味で理解されてしまっていたが、「ハイパー目標」という意味不明な言葉に、しっかり定義付けをすることで、「語られる」フレーズに昇華することができた。

5. かたまりだましい:周りを巻き込み・巻き込まれることがハイパー目標達成の鍵

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ひとりひとりの視点には必ず偏りや盲点のようなものがあるため、いろいろなインプットを得ることで意思決定の精度があがることはさまざまな実験で証明されている。そして、なにより、1人でできることは限られているし、かっちりした組織という訳でもないので、うまくかたまりをつくっていって最大活用することが大事。これが、ハイパー目標達成のためにもひとつのカギになる。

いいプロダクトを置いておくということではなく、しっかりとコミュニケーションするというチームワークで実績を残すことができたfreeeのエッセンスのひとつ。

(でもスミマセン、キャッチフレーズはゲームの名前を採用。ここはアウトプット思考でね。)

そして運用

こうしてアップデートされた価値基準は、トイレに掲出され、みんながリラックスする時間に目に触れることになった。

今回、価値基準は大幅にブラッシュアップすることができ、意義深いものになったと思う。

まず、全員が関与してつくったものであるから、当然覚えやすいし、覚えるだけではなく、そこに込められた意味についての理解がしやすい。こういったものは全員が理解してはじめて意味をなすものであって、文字面だけ存在していても理解がずれていては意味がない。

そして次に、意識をされなければ意味がない。freeeのメンバーがこの5つを意識してなされた意思決定であれば、そうそう外れないだろう、というのがこの仕組みをうまくいかせる上での重要な前提だ。今回アップデートした価値基準は、会話に組み込みやすいので、自然と会話に組み込まれ意識されやすくなっている。「これ、マジで価値ある?」とか、「じゃあ、アウトプット思考でいこう」とか、「ハイパー目標立てました!」など。会話として使われるようになれば、意識されているということになる。

組織は常に進化していくべきで、こういったものも現在のところの最適解にすぎず、さらにチームや事業が拡大していくにつれ、どんどん見直されるべきだ。でも、こういった価値基準さえもオープンソース的にみんなでアップデートしていけると骨太な組織になっていけるのではないかなと考えている。

学び

「会話に組み込まれる」ような価値基準を設定して、意思決定をスムースに。

元フリーターが大活躍。スタートアップで「経歴」よりも大切な5つのこと。

スズキです

ユキナオです

「ほぼ」新卒なスターが活躍する freee。ちょっと知られたところで言えば、「東大法学部卒無職31歳が半年でプログラマーになった」平栗(ぐりちゃん)や、freee創業当初のインターンであった「カップル揃ってスタートアップ、東工大リケジョ」の前村(なおちゃん)が大活躍している。

今回は、これまた「ほぼ」新卒で、マーケティング活動全般を担当してfreeeの急成長を支える、鈴木ユキナオ の分析を通じて、スタートアップで活躍する人材の特徴についての僕の勝手な見解を考察してみる。

ここに書くこと:

ユキナオは、freee のリリース直後に freeeのインターンに応募。当時既に大学を卒業しており、フリーターとして警備の仕事に従事する傍ら、freeeに面接にやってきた。もちろん、スーツなどは着ていないし、どう見ても「君、ちょっと前まで髪型としてはモヒカンといわれる髪型だったよね?!」という雰囲気を漂わせつつ、彼は freee に現れたのであった。

到底普通の会社では採用されないであろうユキナオであったが、入社後は圧倒的に活躍をする。こんなから学べる、スタートアップで必要な素養は、

1. あらゆる手口を試してみる

2. 謙虚な姿勢と好奇心

3. 気合いのリサーチ

4. 「アイデアは量」と考えられる

5. 一体感を呼ぶ力

である。それぞれについて詳しく見ていこう。

 

1. あらゆる手を試してみる

ユキナオが、インターン募集サイト「キャリアバイト」を通じて freee に応募してきたのは、「クラウド会計ソフトfreee」のリリース直後であった。予想もしてなかった急激なアクセスでてんやわんやな状況の中、募集サイトから送られてくる機械的な応募メールを僕は恥ずかしながら気付かずスルーいていたのであるが、ここでさらに追い打ちをかけるようなメールが「キャリアバイト」の営業担当から届く。

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知っている営業担当からのメールなので、今度は普通にメールに気づく。これまで、こういったかたちでの連絡が来たケースもなかったし、よくよく応募メールを読み返すと、ちょっと気になるコメントも書いてあった。

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サイトから応募して、会社から返事がなければサイトに問い合わせる。目的を達成するために、とりあえずやれそうなことはやってみるのはまず重要である。

 

2.謙虚な姿勢と好奇心

そしてユキナオは面接にやってきた。あからさまにちょっと前まではたいそうなモヒカンであっただろう出で立ちで、彼はfreeeにやってきた。

話を聞いてみると、ニュースサイト運営の経験とか、あとは、バイト兼趣味での動画編集の経験とか、今どきのオンラインのマーケティングをやる上で役に立ちそうなスキルを持っている。

(例えばこのビデオはユキナオの自作だ)

すごいすごい、と思いながら話を聞いていた僕であった訳だが、「どんなふうにfreeeで活躍できると思う?」と聞くと、

「いやー、自分はまだ何もできないんで。動画とかはまあつくれると思うんですけど、そうじゃなくてfreeeのビジネス全体に貢献したいと思うんですよね。そのためにはなんでもします、としか言えないんですけど、、、まあ、イメージのつく範囲では、掃除とか。」

「え、掃除?他には何かできないの?」

「うーん、どうっすかねぇ。ちょっと考えてみます。」

なんとも頼りない感じだ。

当時の僕は、このやりとりをなんとも不安に感じたものだったが、振り返って考えてみると、ユキナオは当時すでに「エンタメ系のサイト運営」や「動画編集」においてはそれを職業にできるレベルであったにもかかわらず、そこにとらわれずやりたい、そしてそこに挑戦できるのだったら、とりあえず今のところはできないのでなんでも挑戦する、と言ってくれていたのだ。もちろん、もっといいプレゼンテーションの仕方はあるものの、変に経験にとらわれたり、奢ったりすることなく考えらることはとても重要だと思う。

経験はときに足かせになったり、限界となったりしてしまう。僕がGoogleに入社したとき、周りの人に「大変なことは何ですか?」と聞くと、「Googleは特別な会社だから、常識を unlearn するのが大変だよ」と言われたことがとても印象的であったのだが、今思うと「積極的に unlearn できる環境」というのは経験や既存の枠に捕らわれない素晴らしい環境だ。

よくスタートアップで活躍するには好奇心が重要という話もでてくる。僕は、好奇心とは謙虚さとの裏返しであるような気がする。現在、自分はこれがわからないと思うからこそ、何かを知ったり、学んだりするときに面白みや興奮を覚えるのだ。

 

3. 気合いのリサーチ

ユキナオ&ぐりちゃん

旧オフィスの庭でリサーチにいそしむユキナオ

1. のあらゆる手をつくすとちょっと似たベクトルかもしれないが、特にここ10年くらいに大きく重要性が増したこととして、気合いのリサーチ力というのがあると感じている。

ユキナオは面接の後、翌日13時までに freee に貢献するためにどんなアイデアがありそうか、まとめて送ると言い残して帰っていった。そして翌日、気合のリサーチが感じられる14ページくらいのレポート送ってきた。

綿密というわけではないが、とにかくいろいろな事例を頑張って調べ、それを自分なりにフレームワークにまとめたな、ということが感じられる内容のレポートであった。

実際、ユキナオは今も抜群のリサーチ力がある。別に英語が得意というわけでもないが、気合いで英語のウェブサイトであろうと本であろうと、とにかく活用できそうなものはだいたい調べる。自社のデータもいろいろな角度から徹底的にしらべる。データを集めるために必要なツールがあれば、もちろん勉強する。

変に自分に限界を敷かず、うまく必要な情報を集めることの重要性は、この10年くらいの間に圧倒的に高まったと思う。それは、インターネット上で自分だけで調べられる情報が圧倒的に増えたからだ。

まだ駆け出しの頃、自分自身もこの気合いのリサーチ力に随分救われたし、これによっていろいろな道を切り開いてきたと思う。

 

4.「アイデアは量」と考えられる

(ここでfreeeマンがユキナオです)

「アイデアは量」という考え方を持てる人は意外に少ない。僕自身は、広告代理店の新人時代のコピーライティング研修でこれを学んだ。ある商品に対するコピー案を1日100案ずつ大先輩のコピーライターに見せなくてはならないという研修で、もちろんそのコピー案は徹底的にダメ出しされるのだ。

この「アイデアは量」を学ぶことは、3つのメリットがある。

  • さまざまな制約に縛られず発想できるように(せざるを得なく)なる
  • 周囲へよい刺激を与える
  • アイデアに対して客観的になれる

1つ目・2つ目のポイントは「いわずもがな」なのだが、ここでは2つ目がポイントだ。慣れていない人にとっては、アイデアを人に述べることは案外恥ずかしいものだ。なので自分のアイデアを表現しようとするときに、そのアイデアが優れている理由を探しすぎてしまう。(より良いアイデアを考えることができたかもしれないのに、アイデアを正当化する理由探しに時間をつかってしまったり)その過程で自分のアイデアに愛着を持ちすぎてしまい、客観的な判断ができなくなってしまうのだ。

一方で、「アイデアは量」さえ身につけておけば、自分のリソースをいったん「いいアイデアを数多く出す」というところにフォーカスさせて、その後で今度はフラットな目線で、よいアイデアを客観的に評価することができる。

前述の通り、ユキナオから面接翌日に送られてきたレポートは、数々の駄作とも言えるアイデアで埋め尽くされており、「人に見せるの恥ずかしいだろうな」というような内容であった。しかし、そのようなレポートを送ってくれるところに「アイデアは量」マインドが強く感じられるし、実際ユキナオはそのように活躍している。

 

5. 一体感を呼ぶ力

少数精鋭のスタートアップは、もちろん強い一体感を持つが、やはりそこが競争力の源泉であったりするので、そんな一体感をさらに強めるような力はとても活躍する。

ユキナオの特技に、「最高の集合写真を撮影する」能力がある。集合写真を撮るのは、何らかの記念であったり、何らかの目的があったりするものだが、そのような記憶に残る局面で、最高の写真を撮るナイスプレーをする。手段としては、奇声を発する、奇妙な動きをするといったような手段ではあるが、なぜかみんなの結束力は増し、素敵な写真が撮れるのだ。

ちなみに、僕は撮影を含んだ取材を受けたことは結構あるが、ユキナオはそのなかでもトップクラスのカメラマンになれるのではないかと思うほど、笑顔の撮影においては圧倒的な演出スキルがある(それはカメラマンのスキルではないかもしれないが、、、)。

出社初日の朝会では、とりあえず「大声」で挨拶をすることで、なんとなく身のある挨拶をしたっぽい印象を残したユキナオであるが、このようにどんな手段であっても、とにかく一体感を強化する力はスタートアップの競争力をさらにアップさせるためにとても重要だ。

五反田で集合写真

ユキナオプロデュースの集合写真

 

まとめ

以上、freee のユキナオ君の応募、面接、入社時などを振り返り、スタートアップで活躍する人材を見破る方法を考察してみた。これらの素養は非常に役に立つ素養であることは間違いないが、ユキナオという個人を切り口として考察しているので、もちろん別の確度から貢献できる他の素養もあると思う。

ただ、新しい価値を世の中にもたらし、世の中を変えていくスタートアップにおいては、経験や経歴は必ずしも重要ではなく、そこに捕らわれない本質的な価値を発揮できる人材であることが重要だと思う。ユキナオはそんなことを実感させる人物である。

 

freee リリース1周年を終えて(ちょっと遅いけど。。。)

先月の2014年3月19日に全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」はリリース1周年を迎えた。1周年にあたっては、リクルートライフスタイル社が提供する「 AirREGI (エアレジ) 」との連携を発表し、freeeが目指すバックオフィスの自動化に向けてまたさらなる大きな一歩を踏み出すことができた。1年目の振り返りを書き留めておこうと思いつつ、1ヶ月が軽く過ぎてしまったので、「まだ先月の話」といえるうちに公開してみようと思う。

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[リリース1周年飲み会にて]

 

2013年3月19日、freee公開

freeeのように簡単かつ自動でつかえるクラウド型の会計ソフトに対するニーズが必ずあることは僕は確信していたが、実はリリース前にコンセプトレベルで調査やヒアリングをしたときに必ずしもfreeeの評価は高いといえなかった。そんなこともあり、半信半疑でお祈りするような気持ちで、2013年3月19日freeeをリリースするにいたった。蓋を開けてみると想像していたよりも圧倒的に高い評価と実績を最初の数日でつくることができた。まずは細々とでもよいから着実なスタートを、と考えていたところが、想定以上のアクセスでパフォーマンスが低下するなど社内はいきなり大騒ぎ(といっても当時は数名のメンバーしかいなかったのだが、、、)。

開発に着手し、外にも出ず開発のためにマンションの居間に籠もりはじめてから9ヶ月、苦しいときも多かったが、このリリース日に多数のユーザーの方々から応援のメッセージをいただいて、着実な手応えを感じ、このfreeeを徹底的に価値のあるものに育てていこうと、あらためて気が引き締まる、2013年3月19日はそんな日だった。

 

ソーシャルメディアとフィードバック

リリース直後で印象的だったことはやはりソーシャルメディアのインパクトであった。freeeの評判は、Twitter、 facebook、ブログの記事などでまたたく間に広まっていった。以前、大企業で主には既存プロダクトのマーケティングをしていた自分には、この感覚はまったく新しい経験であった。freeeの広まり方がビビッドにソーシャルメディア上で見て取れた。例えが悪いが、昔全身麻酔で手術を受けた際に、点滴から麻酔が入ってきて、それが全身にビリビリっと伝播していくのを感じたのを克明に覚えているのだが、そんな感じだった。

そしてソーシャルメディア上で多数のフィードバックをいただいた。簡単になおせるものや、リリース前には想定していなかったニーズなども多く、すぐになおして連絡するようにした。まさに、freeeはソーシャルメディアによって拡まり、ソーシャルメディアに育てられた。

 

そしてLaunchPad

5月、Infinity Ventures Summit の LaunchPad に参戦する。以前、僕がCFO兼プロダクトマネージャーとして参画していたALBERTの会長の山川さんから、「是非、挑戦してみた方がよい」というアドバイスをいただき、応募をする。スタートアップのデモ大会には何度か出場したことがあるのだが、freee のプロダクトの特性上、共感を得られる方が特定のセグメントに限られるということもあり、こういったものには若干苦手意識があった。しかし、予選での議論が非常によい刺激となったこと、そして、得られる順位や評価がなんであれ、「自分はなぜこれをやっているのか」が伝わるプレゼンをしようと開き直ることにしたことで、少し気がラクになって進めることができた。

そして当日。朝の集合も早く、規模も大きく、オペレーションがしっかりしているIVSだけに、「こりゃ失敗できないな」と思うところに、会場は早々に満員になり、さらに緊張が高まる。

ここで、偶然、登壇者の控え席のとなりに座っていたのが、大学と博報堂の両方の大先輩であるユナイテッドの手嶋さんであり、話に花が咲いて緊張をほぐすこともできた。それ以外のことはあっという間に過ぎていって、結局自分が意図どおり進められたかどうかも記憶にないのではあるが、よい出会いに恵まれてか晴れて優勝することができた。

地味な領域のプロダクトではあるが、この場で優勝できたことは大きな励みになったし、さらに freee の知名度もアップした。また、東京でオフィスから応援してくれていたチームの優勝の瞬間のビデオも後から見て心あたたまるものだった。

 

 

freee 有料プランの開始

8月、標準プラン(有料プラン)を開始する。無料アカウントを登録いただける事業所の数は順調に伸びていったのだが、それでビジネス化に値する価値を利用いただく方々に提供できているかどうかはわからない。そんな意味でfreeeの課金開始というのは、大きく緊張する瞬間であった。

それまで、「大切なデータをお預けするのだから、早く有料にしていただいた方が安心」という声をいただいていたこともあり、もしかすると標準プランを開始することによるポジティブな効果もあるのではないかというかすかな期待があったのだが、実際のところ標準プラン開始以降、本格的に使っていただけ始めたということが問い合わせの内容などさまざまなところで見え始める。

freeeのようなクラウドサービスではユーザーの方々のデータをお預かりするというところが大きな特徴となるが、その場合、ビジネスとしての継続性が見えやすいことは、利用いただく方にとっても重要なポイントであることを再認識する。

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[有料プラン開通時の記念写真]

 

東後が参画

2013年8月、東後がfreeeに参画し、取締役COOに就任した。東後はマッキンゼーを経てGoogleに入社。 Google 時代には、一緒に日本における中小企業マーケティングのフレームワークをつくっていった同志であり、「みんビズ」など、スモールビジネス関連のマーケティングにおいて革新的なプロジェクトを仕掛ける立役者であった。ずっと開発のことばかり考えていて、そろそろマーケティングやビジネスのことも考えていこうという局面で、リハビリもかねて、その後のビジネスプランなどについて東後に相談をするようになったのだが、「こうあって欲しい」という想いドリブンでできた僕の計画値を見て、「なるほど、アグレッシブですね。でも、まあ、頑張ればできそうだ。」と彼がコメントをしてくれたのはとても印象的で勇気づけられた。

実際にfreeeの成長を成し遂げるには、利用いただいている方々のご支援と、チーム一丸となっての成果につきるのだが、freeeのチームをまとめ、マーケティング、提携、カスタマーサポートを目標に向かって推進した東後がfreeeに参画してくれたことは、大きくポジティブな想定外のひとつだった。

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[freee で COO をつとめる東後]

 

モバイル・アプリのリリース

freeeはリリースから実に多くの機能改善、機能追加を繰り返している。1年目の成果としては、対応金融機関の拡充や、消費税、確定申告やe-tax関連の機能追加などが非常に大きいが、中でも特に印象的であったのはモバイル・アプリのリリースであった。

「経理・会計を、だれでもどこでもできることにする」ことはfreeeの目標のひとつであるとともに、ユーザーの方々からの要望が多いという点でも、このモバイルアプリの開発に着手することは重要であった。一方、それ以上に、このモバイル・アプリの開発にあたっては、スタートアップらしさ満点の一見不可能そうな短期開発スケジュールを敷いたのだが、そんな中でもさまざまな工夫を凝らしながら、目標としていた開発終了日の11時57分、見事にAppleへのアプリ審査申請をすることができた。プロダクトとして素早く進化し、より皆様のお役に立てるようになっていくことは freee が提供する大きな価値であり、その上でも象徴的な出来事であった。

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[iOSアプリ審査提出直後の祝杯]

 

急成長とカスタマーサポートの挑戦

消費税の増税、Windows XPのサポート切れなどにより、需要が高まる中、確定申告シーズンに突入。増加するであろう問い合わせなどにも対応するできるようサポート体制の強化はある程度余裕をもって予定に入れていたつもりであったが、それにしてもfreeeは想定以上に早く多くの方々に利用されるようになっていった。

そのため正直なところ、サポートのリソースが追いつかない状況もあったが、だんだん増員とトレーニング、そしてプロセス改善も進み、サポートのレベルをあげていくことができた。また、チャットサポートのように革新的なサポートにも取り組み、高い満足度を実現することもできた。チャットによるサポートの提供には個人的にとても思い入れがある。僕はとてもものぐさな人間で、カスタマーサポートのコールセンターに連絡して、本人確認で時間をとられたり、しらべますのでお待ちくださいと言われたまま、電話を耳にあてて待っているのがとても嫌いだったりする。もう少し良いやり方はないものかと思う中で、チャットはひとつの答えであるような気がしていて、大きな可能性を感じているのだ。

最終的に、通常はカスタマーサポートではないメンバーも全面的にサポートに加わり、日々増加する需要にも対応できた。やがて僕自身もサポート対応を行っていたが、ここからは学ぶことも多かった。リリースから6月までの3ヶ月ほどの時期も僕自身がサポート対応をしていたが、久しぶりであったのといただく質問が高度化しているため回答も簡単ではなかったが、直接ニーズを把握することで、さまざまな改善案も見えた。

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[freee カスタマーサポートコアチーム]

 

最後に

というかたちで、とても多くの方々に支えられつつ、freeeは2年目を迎えた。いつの間にやらfreeeのスタッフは30人を超える。事業計画上は見積もっている数字でも、実際にその風景は迫力が違うし、数字以上に想像できていないことのインパクトを感じる。こんなに素晴らしいチームができていることは、リリース時の2013年3月19日には想像していなかったし、そして同じような感想を来年2015年3月19日に再びもてるよう、頑張りたい。

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[リリース1周年記念飲み会の集合写真]
みなさま、全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」の次の一年もよろしくお願いもうしあげますm(_ _)m。

僕が Google を辞めた理由

Google に入社

僕がスウェーデンに留学していた2002年のある日、ある中国系スウェーデン人の友人の女の子が嬉しそうに話しかけてきた。
「ダイスケ、聞いて!私、Google でインターンすることになったの。私、カリフォルニアに行くわ!」
僕は、ぽかんとした。で、いったいGoogle で何をするの?
「マーケティングよ!」
でも、Google ってただの白いページでしょ。みんなもう使ってるし、何をどうマーケティングするの?
「わかんない!でも、面白そうじゃない?」
振り返ってみると、この頃すでに Google は 検索連動型広告AdWords の販売を開始していて、この2年後にはIPOをする。当時の僕にはまったく知る由もなかったが、新しいファンクションがどんどん立ち上がって当然エキサイティングな時期であったろう。
この5年後、カリフォルニアから来日する Google のディレクターのインタビューを受けないかという話が舞い込んできた。そして、その子の「面白そうじゃない?」という言葉を思い出し、僕はふたつ返事でインタビューにのぞんだ。
ご他聞にもれず、ホワイトボードを使って自分の考えを説明する。英語で本格的にディスカッションをするのは久しぶりだったので、2人との合計2時間近いインタビューのあとはへとへとになって頭が溶けそうになった。その後、Google からのオファーをもらったが、実際に、Google にジョインするかどうか僕はまだ迷っていた。
その頃は、「国産検索エンジンを!」というようなことがまだ叫ばれていた頃であり、なんとなく外資である Google に行くのが気が引けたのだ。ここに僕の友人が肩を押す。
「気が引けるっていうけど、むしろ Google が日本に広まって行かないことの方が将来的に日本にとってのリスクになるかもしれないんじゃない?」
この言葉はとても腑に落ちた。そして、僕は Google にジョインする。

入社後すぐに、カルフォルニアのマウンテンビューにある本社(Google キャンパス)に2ヶ月ほど滞在することになった。
はじめてのマウンテンビューに向かう車の中
マーケティング戦略やプロダクト戦略のためのデータアナリストというアジアはじめてのロールで採用された僕の最初のミッションは、まず、本社のメンバーとプロジェクトをこなして、Google のデータアナリストチームのやり方を吸収するというものだった。公私ともにシリコンバレーを満喫できた。仕事では多くのさまざまなバックグラウンドを持った Googler と会い、議論し、プロジェクトを進める一方、週末にゴルフ場にぷらっと一人で行くと、他に一人で来ているような人たちと一緒に回ることになるのだが、たいてい、Yahoo や ebay といったテック企業で働いている人たちで、シリコンバレーのゴシップなんかを話ながらゴルフをする。
Google のコーポレートアパートメント
このように Google での最初の立ち上がりをマウンテンビューで過ごすことができた経験から、Google が狙うスケール感や、どう Google のリソースを活用して、自分の価値を発揮するかについて非常によい勘どころが身についたような気がする。その後、私は日本のマーケットでの中小企業向けのマーケティングを担当するようになるのだが、自分の担当する日本というマーケットだけに視点を持つのではなく、海外のマーケットからのラーニングなどを活用して自分たちのストーリーをつくっていった。そして、その後アジア・パシフィック全体の中小企業向けマーケティングを統括するようになった。

Google での生活において僕のベースとなるオフィスは東京オフィスであったが、非常に国際的な5年弱を過ごした。世界中の超優秀なGoogler 達と議論するしていると自分が情けなく思えるようなこともしばしばであるが、そのように落ち込んでいる暇もなく、学びだらけの毎日であったと思う。

Google を辞めた理由

僕がなぜ全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」の事業を立ち上げたかということは以前書いた通りなのであるが、それとは別に、「なぜそんな Google を辞めたのか」ということをとてもよく聞かれる。freee の事業がやりたかったのだというのがもちろん最も重要な理由だ。ただ、より自分と Google という視点から見てみると、昔から起業したかったかという訳でもない自分が Google を辞めて起業をしたのは、ざっくりいうと、「Google のキャリアを通じて、僕のネクストステップとしては「起業」というかたちが自分がもっとも世の中にインパクトを与えられうるかたちだと思うようになった」というのが言い当てていると思う。さらにそれをひも解いてみると、主に3つの要素があると思う。

1. 起業やスタートアップが普通の選択肢

起業したり、アーリーステージのスタートアップにジョインするというのは Googler(Google社内用語でGoogler社員のこと)にとっては、結構普通のチョイスだと思う。有名な起業の例でいえば、Instagram や pinterest などがあるし、逆に現役の Googler の中にも、かつて起業を経験したことがある人も多い。Google にいると、起業は珍しい考えなのではなく、すぐ身近にある選択肢だと思うようになる。印象的なできごとがあった。ある時、僕はロンドンで開催された、Google のさまざまなオフィスののさまざまな領域でのシニアマネージャーを対象としたリーダーシップに関するトレーニングに参加した。そのプログラムの中で講師から、「Google にジョインしなかったら今何をしていたと思うか」という質問があって、その場のほぼの人が「起業していたと思う」と答えた。そんな環境でいると、自然と起業するということが普通の選択肢となってきた。また、Instagram の創業者で、ex-Googler (Google用語でGoogleのOB/OGのこと)であるKevin Systrom のエピソードにも刺激を受けた。Kevin はGoogleでは僕と同様にマーケティングの組織に在籍しエンジニアではなかったが、自分でプログラミングを覚えてプロトタイプを作成し、Instagram を立ち上げたという話だ。これを聞いて、なんとなく起業するに際しては自分もコーディングを覚えて実践するというアイデアに対しても抵抗がなくなった。そして、全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」の構想ができてきたころ、僕は Ruby On Rails の勉強をしてプロトタイプづくりを始めた。

2. スモールビジネス向けマーケティングとの出会い

インターネットはさまざまなものを民主化 (democritize) した。大企業やお金持ちに限定されていたような情報やコンテンツを分け隔てなく開放することに貢献したのだ。スモールビジネス(中小起業)は特にその便益を受けたセグメントのひとつだ。有名な話だが、Google の収益を支える検索連動型広告の最初の広告主は、自動車会社でも日用品メーカーでもなく、東海岸の小さなロブスター屋さんであった。インターネット以前は広告というマーケティング手段は、スモールビジネスにはなかなか手の出ないものであったが、それが民主化されたのだ。このような動きの中で、スモールビジネス向けのオンラインプロダクトをどのようにマーケティングするかというのは当然重要な課題となるのだが、この領域はまだまだ新しい分野であった。僕は Google にて、偶然にもこのスモールビジネス向けのマーケティングという領域に出会い、世界中で同じテーマに取り組むGoogler と議論したり、海外事例を研究したり、徹底的な試行錯誤を繰り返してノウハウを築いていった。チームの採用活動をする中で、直接関係があったり役に立ちそうな職務経験を持った人にはほとんど出会ったことがなかったことからも、いかにこの分野があたらしい領域かを再認識した。

全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」の構想を思いついたとき、Google 以前に経験した ALBERT でのCFO(最高財務責任者)としての経験やレコメンドエンジンのプロダクトマネジメントの経験、そしてこのスモールビジネス・マーケティングの経験をかけ合わせると、自分はこの事業を他の人よりもちょっとうまくできるような気がした。そんな気がするなら、やってみるのが義務だと考えた。

3. 素晴らしいナレッジやカルチャーは拡散したほうがいい

Google とビジネスをした経験がある人に freee のプレゼンをしたり、僕の思いを説明すると「やっぱり元 Google の人ですね」と言われることがよくある。僕が現在取り組んでいるのは、「会計ソフト」なのであるが、そこに Google の香りを感じてもらえるならそれはとても嬉しいことだ。僕は、有名な「10の事実」に代表されるような Google の考え方やカルチャーが大好きであるし、このような考え方をもとに世の中をもっとよくすることができる機会が、Google が取り組んでいない領域でもたくさんあるのではないかと思う。人材の流動が活発なシリコンバレーでは、Google を飛び出た ex-Googler たちが、シリコンバレー全体としてのカルチャーの形成やイノベーションに大きく貢献している訳で、同じようなことは世界レベルで起きていくべきだ。Google の中でも、マーケティングというプロダクトとビジネスの間に立つ役割を担う機会、さらにアジア・パシフィックという新興マーケットにおいて国際的な役割を担う機会に恵まれた自分であればこそ体得してきたナレッジを異なる領域に応用し、その考え方をさらに世の中に拡散させたい。もちろん、freee がすべて Google 流だという訳ではないのだが、考え方の点で大きく影響を受けている。

ここで、面白いことに最初の話に戻ってくる。「Google のようなものが日本に広まっていかないとすると、それはリスクだ」と考えて Google にジョインした僕は、今度は Google の経験を通じて体得した考え方を、自分のビジネスを通じて、世の中に広めようとしている。

まとめ

このように、Google というカルチャーによって、自分は新しいスキルを身につけることができたし、新しい世界を知り、考え方としても大きく影響を受けるようになった。普段から僕は「結局自分はどんなインパクトを与えたのか」、という問いが自分自身のよりどころとなっているのだが、Google での経験により、今自分のインパクトを最大化させるために、「起業」がもっとも自分にとってしっくりくるネクストステップであると思うようになった。まだまだやらなくてはいけないことだらけですが、スモールビジネス経営者がクリエイティブな活動にフォーカスできる環境の実現に向けて頑張っていきます。

データ連携が実現する会計ソフトの未来

先週はユビレジとのデータ連携と、freee のAPI ベータ版の公開を発表することができた。これは、全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」 の構想の中はとても意義深いマイルストーンであり、freee で実現したい一つの方向を示す第一歩だ。

freee の目指すところは、スモールビジネスの経営者が、経理・会計をまったく意識しなくても、すべての業務が自動で処理をされているという世界であり、これを創業間もないようなビジネスであっても簡単に手がとどくような安価で提供することだ。これにより、経営者の方々がよりクリエイティブな活動にフォーカスできるようになっていただきたいと考えている。

スモールビジネス向けの会計ソフトの利用において、僕が特に大きな問題意識を持っていることのひとつは情報の「手入力」だ。会計ソフトに入力される元の情報(領収書や請求書、レジの売上データなど)の大部分は、プリントアウトされた情報である。プリントアウトされているということは、どこかでデータとして存在するにも関わらず、その情報を再度誰かが手で入力するということが行われているのだ。これは大きな問題である一方、「どこかに存在するはずのデータ」との自動連携をすることでこの問題は解決をすることができる。

freee が最初に実現した銀行やクレジットカードの口座との自動同期は、この目的を達成する上でのベースラインといえる取り組みで、これにより会計や経理の業務のかなりの部分を自動化することができる。ただこれだけでは不十分な場合もあり、それを解決するには、スモールビジネスの方が利用するさまざまなツールに潜むデータと自動連携を進めることで、多様なニーズに応え、さまざまなスモールビジネスの会計・経理の業務のほぼ全てを自動化していくことができるようになるのだ。

こういった「データ連携」の考え方は、大企業ではすでにERPというかたちで実現されているケースが多いが、ERPへの投資はスモールビジネスには賄えないほどの費用がかかるものであり、スモールビジネスにとっては非現実的な選択肢であったし、これにより、バックオフィスの生産性という点で大企業とスモールビジネスの間には大きな格差が生じていた。

しかし、スモールビジネス向けの会計ソフトが、例えば、レジ、eコマース、販売管理などのツールと簡単に自動で連携するようになっていれば、スモールビジネスであっても自分のニーズにあったツールを組み合わせていくだけで、バックオフィス業務をどんどん自動化していくことができる。

API やマッシュアップという言葉がインターネットの世界で盛んに使われるようになって久しいが、日本のビジネス向けツールの領域では、オープンなデータ連携はまだまだ進んでいないのが実情。freee とユビレジの連携も、日本ではじめてPOSレジデータと中小企業向けの会計ソフトを自動連携するソリューションだ。freee は今後、このような「データ連携」の実現をさまざまなエリアで促進していく。そして、API の提供も開始したことでさらにこの動きを加速化させていこうと考えている。

ビジネス向けのアプリケーションの中で「データ連携」をあたりまえにしていくこと、そしてそれを用いてさらなる業務の自動化を実現していくこと、これらを通じてスモールビジネスの活性化と、スモールビジネスの経営をする方々のクリエイティブな時間を強く応援していきたい。