freee リリース1周年を終えて(ちょっと遅いけど。。。)

先月の2014年3月19日に全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」はリリース1周年を迎えた。1周年にあたっては、リクルートライフスタイル社が提供する「 AirREGI (エアレジ) 」との連携を発表し、freeeが目指すバックオフィスの自動化に向けてまたさらなる大きな一歩を踏み出すことができた。1年目の振り返りを書き留めておこうと思いつつ、1ヶ月が軽く過ぎてしまったので、「まだ先月の話」といえるうちに公開してみようと思う。

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[リリース1周年飲み会にて]

 

2013年3月19日、freee公開

freeeのように簡単かつ自動でつかえるクラウド型の会計ソフトに対するニーズが必ずあることは僕は確信していたが、実はリリース前にコンセプトレベルで調査やヒアリングをしたときに必ずしもfreeeの評価は高いといえなかった。そんなこともあり、半信半疑でお祈りするような気持ちで、2013年3月19日freeeをリリースするにいたった。蓋を開けてみると想像していたよりも圧倒的に高い評価と実績を最初の数日でつくることができた。まずは細々とでもよいから着実なスタートを、と考えていたところが、想定以上のアクセスでパフォーマンスが低下するなど社内はいきなり大騒ぎ(といっても当時は数名のメンバーしかいなかったのだが、、、)。

開発に着手し、外にも出ず開発のためにマンションの居間に籠もりはじめてから9ヶ月、苦しいときも多かったが、このリリース日に多数のユーザーの方々から応援のメッセージをいただいて、着実な手応えを感じ、このfreeeを徹底的に価値のあるものに育てていこうと、あらためて気が引き締まる、2013年3月19日はそんな日だった。

 

ソーシャルメディアとフィードバック

リリース直後で印象的だったことはやはりソーシャルメディアのインパクトであった。freeeの評判は、Twitter、 facebook、ブログの記事などでまたたく間に広まっていった。以前、大企業で主には既存プロダクトのマーケティングをしていた自分には、この感覚はまったく新しい経験であった。freeeの広まり方がビビッドにソーシャルメディア上で見て取れた。例えが悪いが、昔全身麻酔で手術を受けた際に、点滴から麻酔が入ってきて、それが全身にビリビリっと伝播していくのを感じたのを克明に覚えているのだが、そんな感じだった。

そしてソーシャルメディア上で多数のフィードバックをいただいた。簡単になおせるものや、リリース前には想定していなかったニーズなども多く、すぐになおして連絡するようにした。まさに、freeeはソーシャルメディアによって拡まり、ソーシャルメディアに育てられた。

 

そしてLaunchPad

5月、Infinity Ventures Summit の LaunchPad に参戦する。以前、僕がCFO兼プロダクトマネージャーとして参画していたALBERTの会長の山川さんから、「是非、挑戦してみた方がよい」というアドバイスをいただき、応募をする。スタートアップのデモ大会には何度か出場したことがあるのだが、freee のプロダクトの特性上、共感を得られる方が特定のセグメントに限られるということもあり、こういったものには若干苦手意識があった。しかし、予選での議論が非常によい刺激となったこと、そして、得られる順位や評価がなんであれ、「自分はなぜこれをやっているのか」が伝わるプレゼンをしようと開き直ることにしたことで、少し気がラクになって進めることができた。

そして当日。朝の集合も早く、規模も大きく、オペレーションがしっかりしているIVSだけに、「こりゃ失敗できないな」と思うところに、会場は早々に満員になり、さらに緊張が高まる。

ここで、偶然、登壇者の控え席のとなりに座っていたのが、大学と博報堂の両方の大先輩であるユナイテッドの手嶋さんであり、話に花が咲いて緊張をほぐすこともできた。それ以外のことはあっという間に過ぎていって、結局自分が意図どおり進められたかどうかも記憶にないのではあるが、よい出会いに恵まれてか晴れて優勝することができた。

地味な領域のプロダクトではあるが、この場で優勝できたことは大きな励みになったし、さらに freee の知名度もアップした。また、東京でオフィスから応援してくれていたチームの優勝の瞬間のビデオも後から見て心あたたまるものだった。

 

 

freee 有料プランの開始

8月、標準プラン(有料プラン)を開始する。無料アカウントを登録いただける事業所の数は順調に伸びていったのだが、それでビジネス化に値する価値を利用いただく方々に提供できているかどうかはわからない。そんな意味でfreeeの課金開始というのは、大きく緊張する瞬間であった。

それまで、「大切なデータをお預けするのだから、早く有料にしていただいた方が安心」という声をいただいていたこともあり、もしかすると標準プランを開始することによるポジティブな効果もあるのではないかというかすかな期待があったのだが、実際のところ標準プラン開始以降、本格的に使っていただけ始めたということが問い合わせの内容などさまざまなところで見え始める。

freeeのようなクラウドサービスではユーザーの方々のデータをお預かりするというところが大きな特徴となるが、その場合、ビジネスとしての継続性が見えやすいことは、利用いただく方にとっても重要なポイントであることを再認識する。

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[有料プラン開通時の記念写真]

 

東後が参画

2013年8月、東後がfreeeに参画し、取締役COOに就任した。東後はマッキンゼーを経てGoogleに入社。 Google 時代には、一緒に日本における中小企業マーケティングのフレームワークをつくっていった同志であり、「みんビズ」など、スモールビジネス関連のマーケティングにおいて革新的なプロジェクトを仕掛ける立役者であった。ずっと開発のことばかり考えていて、そろそろマーケティングやビジネスのことも考えていこうという局面で、リハビリもかねて、その後のビジネスプランなどについて東後に相談をするようになったのだが、「こうあって欲しい」という想いドリブンでできた僕の計画値を見て、「なるほど、アグレッシブですね。でも、まあ、頑張ればできそうだ。」と彼がコメントをしてくれたのはとても印象的で勇気づけられた。

実際にfreeeの成長を成し遂げるには、利用いただいている方々のご支援と、チーム一丸となっての成果につきるのだが、freeeのチームをまとめ、マーケティング、提携、カスタマーサポートを目標に向かって推進した東後がfreeeに参画してくれたことは、大きくポジティブな想定外のひとつだった。

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[freee で COO をつとめる東後]

 

モバイル・アプリのリリース

freeeはリリースから実に多くの機能改善、機能追加を繰り返している。1年目の成果としては、対応金融機関の拡充や、消費税、確定申告やe-tax関連の機能追加などが非常に大きいが、中でも特に印象的であったのはモバイル・アプリのリリースであった。

「経理・会計を、だれでもどこでもできることにする」ことはfreeeの目標のひとつであるとともに、ユーザーの方々からの要望が多いという点でも、このモバイルアプリの開発に着手することは重要であった。一方、それ以上に、このモバイル・アプリの開発にあたっては、スタートアップらしさ満点の一見不可能そうな短期開発スケジュールを敷いたのだが、そんな中でもさまざまな工夫を凝らしながら、目標としていた開発終了日の11時57分、見事にAppleへのアプリ審査申請をすることができた。プロダクトとして素早く進化し、より皆様のお役に立てるようになっていくことは freee が提供する大きな価値であり、その上でも象徴的な出来事であった。

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[iOSアプリ審査提出直後の祝杯]

 

急成長とカスタマーサポートの挑戦

消費税の増税、Windows XPのサポート切れなどにより、需要が高まる中、確定申告シーズンに突入。増加するであろう問い合わせなどにも対応するできるようサポート体制の強化はある程度余裕をもって予定に入れていたつもりであったが、それにしてもfreeeは想定以上に早く多くの方々に利用されるようになっていった。

そのため正直なところ、サポートのリソースが追いつかない状況もあったが、だんだん増員とトレーニング、そしてプロセス改善も進み、サポートのレベルをあげていくことができた。また、チャットサポートのように革新的なサポートにも取り組み、高い満足度を実現することもできた。チャットによるサポートの提供には個人的にとても思い入れがある。僕はとてもものぐさな人間で、カスタマーサポートのコールセンターに連絡して、本人確認で時間をとられたり、しらべますのでお待ちくださいと言われたまま、電話を耳にあてて待っているのがとても嫌いだったりする。もう少し良いやり方はないものかと思う中で、チャットはひとつの答えであるような気がしていて、大きな可能性を感じているのだ。

最終的に、通常はカスタマーサポートではないメンバーも全面的にサポートに加わり、日々増加する需要にも対応できた。やがて僕自身もサポート対応を行っていたが、ここからは学ぶことも多かった。リリースから6月までの3ヶ月ほどの時期も僕自身がサポート対応をしていたが、久しぶりであったのといただく質問が高度化しているため回答も簡単ではなかったが、直接ニーズを把握することで、さまざまな改善案も見えた。

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[freee カスタマーサポートコアチーム]

 

最後に

というかたちで、とても多くの方々に支えられつつ、freeeは2年目を迎えた。いつの間にやらfreeeのスタッフは30人を超える。事業計画上は見積もっている数字でも、実際にその風景は迫力が違うし、数字以上に想像できていないことのインパクトを感じる。こんなに素晴らしいチームができていることは、リリース時の2013年3月19日には想像していなかったし、そして同じような感想を来年2015年3月19日に再びもてるよう、頑張りたい。

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[リリース1周年記念飲み会の集合写真]
みなさま、全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」の次の一年もよろしくお願いもうしあげますm(_ _)m。

僕が Google を辞めた理由

Google に入社

僕がスウェーデンに留学していた2002年のある日、ある中国系スウェーデン人の友人の女の子が嬉しそうに話しかけてきた。
「ダイスケ、聞いて!私、Google でインターンすることになったの。私、カリフォルニアに行くわ!」
僕は、ぽかんとした。で、いったいGoogle で何をするの?
「マーケティングよ!」
でも、Google ってただの白いページでしょ。みんなもう使ってるし、何をどうマーケティングするの?
「わかんない!でも、面白そうじゃない?」
振り返ってみると、この頃すでに Google は 検索連動型広告AdWords の販売を開始していて、この2年後にはIPOをする。当時の僕にはまったく知る由もなかったが、新しいファンクションがどんどん立ち上がって当然エキサイティングな時期であったろう。
この5年後、カリフォルニアから来日する Google のディレクターのインタビューを受けないかという話が舞い込んできた。そして、その子の「面白そうじゃない?」という言葉を思い出し、僕はふたつ返事でインタビューにのぞんだ。
ご他聞にもれず、ホワイトボードを使って自分の考えを説明する。英語で本格的にディスカッションをするのは久しぶりだったので、2人との合計2時間近いインタビューのあとはへとへとになって頭が溶けそうになった。その後、Google からのオファーをもらったが、実際に、Google にジョインするかどうか僕はまだ迷っていた。
その頃は、「国産検索エンジンを!」というようなことがまだ叫ばれていた頃であり、なんとなく外資である Google に行くのが気が引けたのだ。ここに僕の友人が肩を押す。
「気が引けるっていうけど、むしろ Google が日本に広まって行かないことの方が将来的に日本にとってのリスクになるかもしれないんじゃない?」
この言葉はとても腑に落ちた。そして、僕は Google にジョインする。

入社後すぐに、カルフォルニアのマウンテンビューにある本社(Google キャンパス)に2ヶ月ほど滞在することになった。
はじめてのマウンテンビューに向かう車の中
マーケティング戦略やプロダクト戦略のためのデータアナリストというアジアはじめてのロールで採用された僕の最初のミッションは、まず、本社のメンバーとプロジェクトをこなして、Google のデータアナリストチームのやり方を吸収するというものだった。公私ともにシリコンバレーを満喫できた。仕事では多くのさまざまなバックグラウンドを持った Googler と会い、議論し、プロジェクトを進める一方、週末にゴルフ場にぷらっと一人で行くと、他に一人で来ているような人たちと一緒に回ることになるのだが、たいてい、Yahoo や ebay といったテック企業で働いている人たちで、シリコンバレーのゴシップなんかを話ながらゴルフをする。
Google のコーポレートアパートメント
このように Google での最初の立ち上がりをマウンテンビューで過ごすことができた経験から、Google が狙うスケール感や、どう Google のリソースを活用して、自分の価値を発揮するかについて非常によい勘どころが身についたような気がする。その後、私は日本のマーケットでの中小企業向けのマーケティングを担当するようになるのだが、自分の担当する日本というマーケットだけに視点を持つのではなく、海外のマーケットからのラーニングなどを活用して自分たちのストーリーをつくっていった。そして、その後アジア・パシフィック全体の中小企業向けマーケティングを統括するようになった。

Google での生活において僕のベースとなるオフィスは東京オフィスであったが、非常に国際的な5年弱を過ごした。世界中の超優秀なGoogler 達と議論するしていると自分が情けなく思えるようなこともしばしばであるが、そのように落ち込んでいる暇もなく、学びだらけの毎日であったと思う。

Google を辞めた理由

僕がなぜ全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」の事業を立ち上げたかということは以前書いた通りなのであるが、それとは別に、「なぜそんな Google を辞めたのか」ということをとてもよく聞かれる。freee の事業がやりたかったのだというのがもちろん最も重要な理由だ。ただ、より自分と Google という視点から見てみると、昔から起業したかったかという訳でもない自分が Google を辞めて起業をしたのは、ざっくりいうと、「Google のキャリアを通じて、僕のネクストステップとしては「起業」というかたちが自分がもっとも世の中にインパクトを与えられうるかたちだと思うようになった」というのが言い当てていると思う。さらにそれをひも解いてみると、主に3つの要素があると思う。

1. 起業やスタートアップが普通の選択肢

起業したり、アーリーステージのスタートアップにジョインするというのは Googler(Google社内用語でGoogler社員のこと)にとっては、結構普通のチョイスだと思う。有名な起業の例でいえば、Instagram や pinterest などがあるし、逆に現役の Googler の中にも、かつて起業を経験したことがある人も多い。Google にいると、起業は珍しい考えなのではなく、すぐ身近にある選択肢だと思うようになる。印象的なできごとがあった。ある時、僕はロンドンで開催された、Google のさまざまなオフィスののさまざまな領域でのシニアマネージャーを対象としたリーダーシップに関するトレーニングに参加した。そのプログラムの中で講師から、「Google にジョインしなかったら今何をしていたと思うか」という質問があって、その場のほぼの人が「起業していたと思う」と答えた。そんな環境でいると、自然と起業するということが普通の選択肢となってきた。また、Instagram の創業者で、ex-Googler (Google用語でGoogleのOB/OGのこと)であるKevin Systrom のエピソードにも刺激を受けた。Kevin はGoogleでは僕と同様にマーケティングの組織に在籍しエンジニアではなかったが、自分でプログラミングを覚えてプロトタイプを作成し、Instagram を立ち上げたという話だ。これを聞いて、なんとなく起業するに際しては自分もコーディングを覚えて実践するというアイデアに対しても抵抗がなくなった。そして、全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」の構想ができてきたころ、僕は Ruby On Rails の勉強をしてプロトタイプづくりを始めた。

2. スモールビジネス向けマーケティングとの出会い

インターネットはさまざまなものを民主化 (democritize) した。大企業やお金持ちに限定されていたような情報やコンテンツを分け隔てなく開放することに貢献したのだ。スモールビジネス(中小起業)は特にその便益を受けたセグメントのひとつだ。有名な話だが、Google の収益を支える検索連動型広告の最初の広告主は、自動車会社でも日用品メーカーでもなく、東海岸の小さなロブスター屋さんであった。インターネット以前は広告というマーケティング手段は、スモールビジネスにはなかなか手の出ないものであったが、それが民主化されたのだ。このような動きの中で、スモールビジネス向けのオンラインプロダクトをどのようにマーケティングするかというのは当然重要な課題となるのだが、この領域はまだまだ新しい分野であった。僕は Google にて、偶然にもこのスモールビジネス向けのマーケティングという領域に出会い、世界中で同じテーマに取り組むGoogler と議論したり、海外事例を研究したり、徹底的な試行錯誤を繰り返してノウハウを築いていった。チームの採用活動をする中で、直接関係があったり役に立ちそうな職務経験を持った人にはほとんど出会ったことがなかったことからも、いかにこの分野があたらしい領域かを再認識した。

全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」の構想を思いついたとき、Google 以前に経験した ALBERT でのCFO(最高財務責任者)としての経験やレコメンドエンジンのプロダクトマネジメントの経験、そしてこのスモールビジネス・マーケティングの経験をかけ合わせると、自分はこの事業を他の人よりもちょっとうまくできるような気がした。そんな気がするなら、やってみるのが義務だと考えた。

3. 素晴らしいナレッジやカルチャーは拡散したほうがいい

Google とビジネスをした経験がある人に freee のプレゼンをしたり、僕の思いを説明すると「やっぱり元 Google の人ですね」と言われることがよくある。僕が現在取り組んでいるのは、「会計ソフト」なのであるが、そこに Google の香りを感じてもらえるならそれはとても嬉しいことだ。僕は、有名な「10の事実」に代表されるような Google の考え方やカルチャーが大好きであるし、このような考え方をもとに世の中をもっとよくすることができる機会が、Google が取り組んでいない領域でもたくさんあるのではないかと思う。人材の流動が活発なシリコンバレーでは、Google を飛び出た ex-Googler たちが、シリコンバレー全体としてのカルチャーの形成やイノベーションに大きく貢献している訳で、同じようなことは世界レベルで起きていくべきだ。Google の中でも、マーケティングというプロダクトとビジネスの間に立つ役割を担う機会、さらにアジア・パシフィックという新興マーケットにおいて国際的な役割を担う機会に恵まれた自分であればこそ体得してきたナレッジを異なる領域に応用し、その考え方をさらに世の中に拡散させたい。もちろん、freee がすべて Google 流だという訳ではないのだが、考え方の点で大きく影響を受けている。

ここで、面白いことに最初の話に戻ってくる。「Google のようなものが日本に広まっていかないとすると、それはリスクだ」と考えて Google にジョインした僕は、今度は Google の経験を通じて体得した考え方を、自分のビジネスを通じて、世の中に広めようとしている。

まとめ

このように、Google というカルチャーによって、自分は新しいスキルを身につけることができたし、新しい世界を知り、考え方としても大きく影響を受けるようになった。普段から僕は「結局自分はどんなインパクトを与えたのか」、という問いが自分自身のよりどころとなっているのだが、Google での経験により、今自分のインパクトを最大化させるために、「起業」がもっとも自分にとってしっくりくるネクストステップであると思うようになった。まだまだやらなくてはいけないことだらけですが、スモールビジネス経営者がクリエイティブな活動にフォーカスできる環境の実現に向けて頑張っていきます。

データ連携が実現する会計ソフトの未来

先週はユビレジとのデータ連携と、freee のAPI ベータ版の公開を発表することができた。これは、全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」 の構想の中はとても意義深いマイルストーンであり、freee で実現したい一つの方向を示す第一歩だ。

freee の目指すところは、スモールビジネスの経営者が、経理・会計をまったく意識しなくても、すべての業務が自動で処理をされているという世界であり、これを創業間もないようなビジネスであっても簡単に手がとどくような安価で提供することだ。これにより、経営者の方々がよりクリエイティブな活動にフォーカスできるようになっていただきたいと考えている。

スモールビジネス向けの会計ソフトの利用において、僕が特に大きな問題意識を持っていることのひとつは情報の「手入力」だ。会計ソフトに入力される元の情報(領収書や請求書、レジの売上データなど)の大部分は、プリントアウトされた情報である。プリントアウトされているということは、どこかでデータとして存在するにも関わらず、その情報を再度誰かが手で入力するということが行われているのだ。これは大きな問題である一方、「どこかに存在するはずのデータ」との自動連携をすることでこの問題は解決をすることができる。

freee が最初に実現した銀行やクレジットカードの口座との自動同期は、この目的を達成する上でのベースラインといえる取り組みで、これにより会計や経理の業務のかなりの部分を自動化することができる。ただこれだけでは不十分な場合もあり、それを解決するには、スモールビジネスの方が利用するさまざまなツールに潜むデータと自動連携を進めることで、多様なニーズに応え、さまざまなスモールビジネスの会計・経理の業務のほぼ全てを自動化していくことができるようになるのだ。

こういった「データ連携」の考え方は、大企業ではすでにERPというかたちで実現されているケースが多いが、ERPへの投資はスモールビジネスには賄えないほどの費用がかかるものであり、スモールビジネスにとっては非現実的な選択肢であったし、これにより、バックオフィスの生産性という点で大企業とスモールビジネスの間には大きな格差が生じていた。

しかし、スモールビジネス向けの会計ソフトが、例えば、レジ、eコマース、販売管理などのツールと簡単に自動で連携するようになっていれば、スモールビジネスであっても自分のニーズにあったツールを組み合わせていくだけで、バックオフィス業務をどんどん自動化していくことができる。

API やマッシュアップという言葉がインターネットの世界で盛んに使われるようになって久しいが、日本のビジネス向けツールの領域では、オープンなデータ連携はまだまだ進んでいないのが実情。freee とユビレジの連携も、日本ではじめてPOSレジデータと中小企業向けの会計ソフトを自動連携するソリューションだ。freee は今後、このような「データ連携」の実現をさまざまなエリアで促進していく。そして、API の提供も開始したことでさらにこの動きを加速化させていこうと考えている。

ビジネス向けのアプリケーションの中で「データ連携」をあたりまえにしていくこと、そしてそれを用いてさらなる業務の自動化を実現していくこと、これらを通じてスモールビジネスの活性化と、スモールビジネスの経営をする方々のクリエイティブな時間を強く応援していきたい。

なぜ会計ソフト?〜全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー) 」創業の理由〜

僕は、スモールビジネスの経営者が本業にだけフォーカスできる環境の実現を目指して、全自動のクラウド会計ソフト「freee (フリー)」を運営している。

全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」

全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」

その中で、

「なぜ会計ソフトを始めようと思ったのですか?」

経理のプロフェッショナルではなく、会計士や税理士といった資格を持っている訳でもない僕が最もよく受ける質問のひとつがこれだ。

とてもよく聞かれるので、どこかに書き留めておこうと思い、ちょっとまとめてみる。

結論としては、僕のこれまでの経験やキャリアから、「こんなものが絶対に必要で、世の中に大きな価値をもたらす」と考えたからで、そのための原体験のようなものは大きく3つある。

  1. 経理やバックオフィス業務の非効率性
  2. クラウドのインパクト
  3. 日本の中小企業マーケットの課題

1. 経理やバックオフィス業務の非効率性

僕はALBERTというレコメンドエンジンのスタートアップでCFO(最高財務責任者)を務めていたことがある。当時社員数にして15名前後の小さい会社であったので、CFOを務めると同時に、新しいレコメンドエンジンの開発の統括も担当していた。要は会社の管理部門とソフトウエアの開発部門を両方見るという面白い経験をここでした訳で、その経験を通じて面白いことに気づかされた。

ソフトウエア開発の現場では、いかに同じデータを入力させずに参照して使いまわすかとうことをよく考えたり、同じプロセスを繰り返すのであれば自動化して生産性をあげようといったことが日常茶飯事として行われるが、経理、法務、人事などのバックオフィス業務の現場では、同じデータをいろいろなファイルに手で入力したり、誰かが入力したものをプリントアウトして、さらに手で入力し直すといったことが日々行われる。この両者の働き方の違いのギャップみたいなものを埋められないかということを当時よく考えた。

これは誰かが悪いということではなくて、そもそもバックオフィスを自動化するためのスモールビジネス向けの手頃なツールがないこと、一見して不必要に思えるプロセスも慣習化してしまっていて、強烈なイニシアティブを持って変えようとしない限り変えることが難しいし、新しいプロセスをつくるのも結局コストであるといったところが問題であった。

2. クラウドのインパクト

その後、僕は Google にジョインする。Google に移る前は例えば、Google スプレッドシートのようなものに対しては実は半信半疑で、これが本当にエクセルに置き換わることがありえるのだろうかと思っていた。しかし Eat your own dogfood (自社のプロダクトを自社で試し、利用すること)を実践する Google で、しばらく我慢して(笑)スプレッドシートを使っていると、得意な点、不得意な点はあるものの、非常に強力なツールであることがわかった。(こんなことまでできてしまう!)そして、パッケージソフトはどんどんクラウドサービスに置き換わっていくことを確信するようになる。

そして、「昔、悩まされた会計ソフトもどんどんこのようにクラウド化されていくのだろうな」ということを Google に移った当時に強く思った。

しかし、当時空想していて、すぐに起こると思っていたこの変化は、僕が freee を創業した 2012年にもまだ訪れていなかった。

3. 日本の中小企業マーケットの課題

僕の Google 時代の仕事は、主にアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括であった。Google の広告プロダクトであるアドワーズの中小企業の顧客基盤を拡大し、中小企業のマーケティングをオンライン化するのが僕のミッションであった。この仕事を進める中で、毎年・毎四半期アジア・パシフィックのマーケットにおける予算や人員などの計画をつくっていく訳だが、その中で各国の中小企業マーケットについていろいろなマクロデータの分析をしていったりもする。するとその中に、非常に気になることがあった。

日本の「開業率の低さ」である。

日本の開業率(年間の新規開業数/全企業数)は5%未満で、OECD諸国の間では最低といわれる。そしてこの値が低ければ、中小企業自体があまり活性化されないし、新陳代謝も非常に低い。ソニーやトヨタも中小企業だったということを考えれば当然、これは日本の今後のイノベーションという観点からも由々しき問題である。

そして当然、日本では新陳代謝の低い中小企業におけるテクノロジーの浸透度も遅れてしまう。Google 時代にも日本の中小企業はファックスを使うという事実に多くの外国人が大笑いをしていたし、実際ワシントン・ポストなどでも記事になるほどだ。もちろんこれを「文化の違い」という解釈で流すこともできるが、明らかにより優れたテクノロジーに移行できないことを「文化の違い」としてしまうのはあまりにも問題を直視していない。

こういった体験から、日本でもっとビジネスを始めやすくする環境をつくること、日本のスモールビジネスが新しいテクノロジーに移行することを誘引できるような魅力的なプロダクトをつくることに大きな興味を持つようになった。

まとめ

以上のような3つの原体験をならべてみたときに、「経営者が本業にフォーカスできるよう、経営者のための全く新しいクラウド型の会計ソフトをつくり、バックオフィスを自動化する」というアイデアを自分が実現することに対して妙に腑に落ちたし、これを強烈にドライブしたいと思うようになった。毎朝、朝日が昇るとぱっと目が覚めて、ではこれをどうやってカタチにしていこうかということばかり考えるように気づいたらなっていた。大雑把にいえば、これが freee 創業の経緯。もっと細かい周辺の話や思いなんかもあるのだが、それは追って綴っていきたいと思う。