起業の失敗を活かしてスタートアップで活躍するということ

よく、「起業するときに、失敗するの怖くなかったですか?」ということを聞かれる。僕はまったくもって怖いと思わなかったのだが、その大きな理由のひとつは、「失敗したとしても、それは絶対にいい経験になる」と思っていたことにある。

僕が以前勤めていた Google には世界中の元起業家がたくさんいたし、その中には活躍している人も多かったので、なんとなく「失敗しても、それは糧になる」というイメージを持っていたということがベースにあると思うのだが、実際、起業の経験がどのようにその後のキャリアに影響を与えるものなのか検証すべく、社内で活躍する営業チームの元起業家をあつめて座談会を実施、そのエッセンスについて考えてみた。

【まとめ】起業から学び、スタートアップで活かされている 4 つのこと

  1. 仲間の重要性を理解し、チームをより活用できる
  2. 視座があがり、より大きな枠組で考えられる
  3. ビジョンの重要性を痛感し、ぶれない意思決定ができる
  4. よりタフなメンタリティが持てるようになる

登場人物

宇津木貴晴:

青山学院大学理工学部卒。インターンとして関わっていたベンチャー企業に新卒として入社。事業部長として事業拡大に貢献し、5年目に本事業を買収し独立。その後改めてゼロから事業を作りたいと考え、中小企業向けに集客支援クラウドサービスを提供する会社を設立し2度目の独立。2015年にfreeeに参画し、セールス内のコンサル営業チームに従事。

小原史明:

専修大学ネットワーク情報学部卒。新卒で株式会社いい生活に入社。入社4年目で最年少営業部長に抜擢され全国営業部売り上げNo.1を達成。その後セールスフォースドットコムでの新規開拓営業、オンラインマーケティング支援会社の起業を経て2014年にfreee に参画。現在はセールスチームのマネージャーを務める。

野崎真司:

明治大学商学部卒。新卒で不動産会社に入社し1年後に退社。その後、DeNAに入社しEC事業に従事。新規獲得営業、ECコンサル、新規サービスの立ち上げなどを担当。その後SMB向けのEC支援事業で起業。2015年にfreeeに参画し、セールス内のコンサル営業チームに従事。

どんな事業をやって失敗したのですか?

野崎:あらかじめ断っておきますが、僕は一応失敗した訳ではありません笑 あくまで起業経験組です。新しいサービスをつくりたいと思って、以前いたDeNAの部長とマーケティングのリーダーと三人で会社をおこしました。DeNAだと大きいビジネスでないとGOを出せなかったが、もう少しスモールビジネスの人向けの、小回りがきくサービスを作りたいという思いでした。EC関連をやっていたので、新しいサービスを立ち上げるにあたって、一番最初は食うに困ってコンサル事業をやって、お金は稼げるもののサービスを立ち上げるところまでなかなかたどりつかなかったんです。お金に困るということはなかったのですが、とにかくサービスをつくる時間がなかった。他のメンバーはまだ事業を続けているので、失敗ではないです。

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宇津木: 自分は2回起業しています。学生のころから起業したいと思っていて。当時世間を賑わわせたホリエモンやサイバーの藤田さんを見て、若くして会社を作るということを知ったんですよね。最初から責任をもって社会に影響を与えるということが衝撃だった。まずはベンチャーでインターンを始めました。入ったのが6人くらいの会社でクラウドを売る事業をしていたんです。その事業を潰すという話がでたので、じゃあ自分にやらせてほしいと手を上げ、1人でやらせてもらった。そのまま入社して、5年後くらいに後その事業を買い取ったんです。

ただ、もう一度、ゼロからやりたいと思い、独立したのが2回目の起業。社会的意義がある、世界にインパクトがあることをしたかったので、何をしようか考えメンバーをあつめて資金調達しようとか考えてやっていたんだけど、メンバーが一緒にできなくなってしまい、スタートから何もない状態になってしまって。まずは生きていかなきゃいけないのでサービスを考えて、生活はできるようになって、ふと気づいたらすごく楽な生活をしていて、人によってはそれは成功になるのかもしれないが、自分にとっては違いましたね。クラウドで月額課金制、営業は代理店。ある程度お客さんがいてあまり解約されなかったのである程度の収入は何もしなくても入ってくるんです。毎日暇で、安堵してしまった。当時は、楽だなあと思ったんですけど、考えてみたら何も成長していないなあと気付きました。20代にがんばった経験の貯金を切り崩してる感じですね。

小原: セールスフォースをやめるちょっと前から会社をやってました。昔から起業したいと思ってたんですが、20代で一度会社を作らないとずっとずるずるいっちゃうかなと思って。もうひとりの仲間と一緒に会社を立ち上げることになりました。

営業畑にいたので、webマーケや集客に興味があったんです。まずはつながりがあった不動産会社や芸能プロダクションのの web 周りのマーケティング支援をしていました。

最初は成果報酬で調子が良かったんだけど、その後もめることも出てきました。効果は出たけど、最初にいってた効果と違うとか。売掛で回収できなかったりとか。

気づくとニッチな産業の穴ばかり探すことになってしまい、最初にやりたいと思っていたスケールするビジネスはできなくなってしまいました。起業でたくましくはなったけど、成長という点では、企業に属していた時の方があったなと。

このような経験から、どんな学びがあり、どのように活かされているのかを自由にディスカッションしていく。

仲間の重要性を理解し、チームをより活用できる

宇津木:僕は、1人でやってたので、1人ってだめだと思った。目的にもよるけど、何か事業を加速させるときって仲間がいないと、相談する相手もいない。結局1人って会社としてやってる意味がないなと。

小原:  同感。組織で人と働くことが重要だということが、起業で逆に分かりました。自分1人だと刺激が少ないから。お客様や取引先とはあるけど、仲間内ですごいなという人と一緒に働くことはなくなる。だから仲間の重要性がわかるようになって、自分の知らなかった意見や違う発想の切り口を積極的に取り入れていけるんですよね。freeeで、他のチームや上司、新しい人とのリレーションをつくっていくことはすなわち自分の成長に繋がるんです。起業前はこんなこと気づかなかった。

野崎: 起業すると何でも自分で決められるという側面もあるけど、自分でゼロからサービスを作ろうと思うと、超遅いんですよね。インパクト残すんだといきがってみるものの、スピードが遅い。

既にリリースしているサービスを優秀なエンジニアと連携しながらやることで、インパクトが全然違うよねということが心の底から理解できるんだと思います。

小原: あと、少人数でやっていて目線が狭くなっちゃうことも多かったのですよね。目の前のことに夢中になって、お金を回収する作業がうまく行かなかったりとか。入金されるっしょと思ってたらされてない。200万なのに50万しか入ってない、どうする?みたいな。社長のところにいって「契約書ありますよね」と言ったら、「分かんない」とか言われて。結局解決しなかった。実は社長だと思ってた人が仮置きされてる人で、オーナーが別にいた。そのオーナーのコミットメントをとれていなかったんですよね。営業として基本的なことができてなかったんです。もっと仲間と議論して、振り返りをしていればこういうことも防げたのかなと。

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視座があがり、より大きな枠組で考えられるようになる

野崎:起業した後、freeeに入って組織の中での自分の役割が有機的にわかるようになりました。目線が高くなるというか。漫然と働くというところから一度外れることで見えてくるものがありました。例えば、新しい機能がリリースされましたという話は、起業以前は「リリースしたんだ」くらいだったのですが、今はこれが出たらもとこれもできるんじゃないか、あれもできるんじゃないかと考えるようになって、組織の中で起こるあらゆることを有効活用できるようになる。

宇津木:ビジネスがうまくいってないときなんかに、僕は、生きることについて真剣に考えた。生きてる意味というか。客観的に自分を見つめなおすというか。

野崎:そう、一旦自分を見つめなおすことで気づくことがある。忙殺されて気づいていなかったことに起業を挟んだことで気づいたんです。結果、事業全体を自分事として捉えてみる力ができた。「この会社と一緒に」、どう価値をつくれるかを考えるようになる。もちろん、そう思える会社じゃないと働きたくない、という気持ちはさらに強くなる訳ですが。

僕:確かに、視座はあがるよね。僕は起業すること自体ははじめてだけれど、学生時代にスタートアップで本気でインターンしていたことがあったり、その後も小さな組織で働くことが多かったので、そういうことは、部分最適ではなく全体最適を常に考えるために役に立ったと思う。

ビジョンの重要性がわかり、ぶれない意思決定ができる

宇津木:まずは生きていかなきゃいけないのでサービスを考えて提供し、生活はできるようになったんだけど、ビジョンとか何もなかったです。とりあえず生きていければいい、お金が入ってくればよいと思い、元々考えたところとはまったく違うビジネスにいってしまいました。目先のお金に振り回されたというか、追われたなというのはありますね。

小原: とりあえずビジネスやり始めてお金が回ったら勝手にビジョンができるかと思っていたらそうじゃなかった。ビジョンを、方向性だけでも持っておいて、そこへの階段を登っているという感覚を作るのが大切だなぁとつくづく思います。

多分、起業にはお金とビジョンの二軸があるんですよね。

お金は儲かれば儲かるほど、もっと儲けるにはどうしたらいいかという話ばかりになって、いろいろなことを見失う。稼ぐためのビジネスだと、全然やりたくもないことに関わっていったりとか。

だからこそビジョンを最初に作っておくべきですね。

単純に儲かるで飛び込むと、どっかで終わりが来るんですよね。半年くらいものすごい利益出してもいきなり切れたりとか。利益率が高いお客さんがいなくなって、すぐ利益が出なくなるとか。今単発で儲かるビジネスを考えがちになってしまう。儲かるものがなくなると、ホワイトボードに向かって儲かることを考える。そしていつのまにかホワイトボードに向かってる時間がどんどん長くなる。ここ市場ありそうだねとか、そういうことばかりやっちゃう。ビジネスモデルを組み立てるだけ。

もっと実行したものにフォーカスするべきだったと思う。ゼロイチばかりやるのではなく、1を100とか200にするというか。強いビジョンがないとそれってできないのですよね。

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野崎: freee の立ち上げのころはぶれなかったんですか?

僕: 当然、ぶれぶれのときもあった。ただ、「ビジネスを経営する人達が、自分の好きなことさえしていれば事業をカンタンに推進できるような環境をつくりたい」 というゴールは変わっていなくって、一時期は会計ソフトよりももう少し小さなものから始めようかという話もでたけど、ど真ん中の会計ソフトで勝負をすることにした。最初の頃だと、どこまでをぐいぐい決めてよいのかも難しいし、開き直るまでにはちょっと時間かかったけど。

当然、メンタルはよりタフになる

宇津木:やはり、生きることについて真剣に考えるくらいなんで、メンタルがタフになるんですよね。

小原:給料から勝手に年金がひかれるという訳でもないので、いろいろかかるコストに何のために払ってるんだっけ、とか苦しいときに思った。起業して半年くらいの一番苦しい時に住民税の請求とか届くんですよね。え、このタイミングで?って。こういうの経験すると本当に強くなる。

また、いろんなこと起こるから、そこも身軽になるしタフになります。「明日いける?」って言われて、次の日にハワイにいったりとか。

宇津木: 俺、アフリカとか行った。ほぼ、現実逃避でした。でもアフリカでやっぱり自分でプロダクトつくれなきゃいけないよねと思ったんです。面白い Web サービス思いついたんで、23時間のドバイのトランジットでずっと開発の勉強をしました。そのプロダクトは単純に面白そうだからつくってみて、今思えば何の課題も解いていなかったので当然失敗しましたが。

現実逃避にアフリカにいっても、そんな瞬発力はあった。

それからなんといっても、メンタルでいえば、「モチベーションがあがらない」みたいなことがないんですよね。起業してると、当然モチベーションが上がらないと会社潰れるし。。考えたこともなかった。多分、プロスポーツ選手とかも、そんなこと考えてないんじゃないかなと思います。

組織の中にいても、そもそも自分の周りの人達にモチベーションを与えられる人になれば、自分のモチベーションを考える必要もなくなると思うし。

僕: じゃあ、やる気ないときってないの?

宇津木: なくはないけど、それを他人のせいにしないというか。結構自分で解決できることは多いなと思います。

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元起業家キャリアと freee

野崎:自分たちのサービス開発のため、いろいろなビジネスについて調べているうちに、freeeを知り、これは確実にスケールするビジネスだと思ったんです。自分が立ち上げるときにはストック型のビジネスを作りたくて。それを形にするのがどれだけ難しいというのが肌感としてあった中、freeeはそれが形になっている会社だったんです。

宇津木:そう、スモールビジネスの人にITを使って支援することをずっとやってきたので、あらゆるビジネスで 必要になる会計ソフトを中心とする freee のプロダクトはインパクトを与えられる範囲としては一番大きくて最終形だと思ったんです。自分がやってきた中で。これまで一人でやってきて、「自分が心底共感できるか?」というとこを特に考えましたね。

小原:ビジネスモデルに加えて、自分でやることの限界を感じていたので、とにかく優秀な人、すごい人と働きたいと思ってたんですよね。すごい人って曖昧なんですが、面接とかで、「すっげー、この人に勝てない」と思えた。

野崎:価値基準もよかった。「理想ドリブン」というのが一番刺さって。自分たちに一番欠けていたから。

宇津木:freee にとってのお客様である経営者と話すとき、いろんな感覚が非常によく分かるんです。具体的に、アドバイスしたり相談にのれる。年後にこうなるから今のうちにこうした方がいいですよとか。

一同:それ、あるある

宇津木: もっと起業経験者来てほしい!

小原: 起業しても戻ってこれるよみたいな。ちゃんとビジョン持とうといいたい。

野崎: 経営陣や起業失敗組とアイデアについて語る会とかやる?

宇津木: 会社設立 freee に「まだ迷っている」ボタンをつけて、そこから案内するとか。あと、会社設立 freee に「ビジョンを入力してください」とかもいいかも。

小原: 答えによっては、「まだまだ早いですね」とか。

(一同笑)

考察

今回は、起業経験について社内座談会を実施するというフォーマットで、起業からの学びについて考えてみた。個人的には一番以外だったのは、起業して仲間の重要性を再実感するという部分であった。確かにこれは、僕自身も freee の経験を通して強く言えることだと思うし、こういったところも再認識する場として、面白い議論だった。

freee は、自分たちの提供する価値を通して、より多くの人が起業に挑戦しやすい環境づくりを実現することをひとつのゴールとしている。一方で、組織としても、元起業家などから多くの刺激を受けて、周囲からユニークな感覚やマインドセットを学び取れる環境でありたいと思う。

僕が成長期の Google で周りから受けたいろいろな刺激を超える刺激を持てる会社にしていきたいと今回の議論を通して、あらためて思った。

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