新年、明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。
(以下、文語にて)
2015年初のブログポストは昨年のまとめとして2014年のfreeeを振り返ってみる。最も大きなマイルストーンは、クラウド会計ソフトにおいて、freeeがシェアNo.1 であるということが確認されたことだ。(デジタルインファクト調べ「クラウド会計ソフトの利用動向調査」より)」
これが達成できたのはもちろん、freeeを支えていただいている皆様のご支援にもとづくものであり、まずは皆様に大きな感謝を申し上げたい。そして、その背後にどのような動きがあったかをあわせて振り返ってみる。
1.「経理をとにかく簡単にして自動化する」挑戦と進捗
freeeの掲げるミッションは、「スモールビジネスに携わるみんなが創造的な活動にフォーカスできるような環境の実現」であり、そのために、バックオフィスの業務をテクノロジーによって簡便化・自動化していくことを目指している。freeeが最初に実現したことは、「シンプルなビジネスを想定した際に、経理の業務を限りなく自動化し、個人事業主であれば確定申告まで自動で簡単にできる」ということであった。
結果として、2014年2-3月の確定申告においては、freeeで確定申告をしていただいたお客様の51%超が確定申告の作業が2時間以内で終えたということがわかっており、これまでのソリューションでは何日もかけて苦労する方が多い現状を踏まえると大きな進捗があったといえる。
また、昨年には業界初となるチャットサポートの提供も開始し、お客様の疑問点等を素早く適切に解消する体制を整えることができた。もちろん、初の試みであったため、導入初期には必ずしもご期待に添えない場面もあったのではあるが、現在ではチーム体制とノウハウ含め盤石な体制を築くことができた。
さらに、問い合わせが多い部分などを中心に、ユーザーインターフェースの改善も大きく進捗した。昨年の確定申告期以前の freee をご覧になった方は、現在の freee をご覧になってもその差に驚くはずだ。確定申告においてfreeeを利用される方には、申告の時期のみログインして利用される方もいらっしゃるが、最近よく驚きの声やよいフィードバックをいただいている。また、あわせて、iOSとAndroidにおけるモバイル・アプリの提供も開始し、モバイルからでも簡単に経理ができることを目指して日々改良を進めている。
2. 新コンセプト「バックオフィス最適化」とモバイル
昨年11月には、「バックオフィス最適化」という新しいコンセプトを発表した。
freeeが個人事業主の方だけでなく、法人の方からも積極的に利用されるようになってきたことをうけ、単なる「簡単で自動の会計ソフト」という枠を抜け、経理周辺のバックオフィス業務全体を最適化を目指そうとするコンセプトである。もちろん、中小規模の法人での利用を想定したものだ。
例えば、小さな会社における経費精算のプロセスを例にとってみる
- 従業員が経費申請フォーム(エクセルなど)に記入する
- 従業員がレシート等を紙に貼り、フォームとあわせて経理に提出
- 経理担当者や上長が1.と2.を確認して承認
- 会計ソフトに精算について記録
- 銀行にて各従業員に支払を登録
- 会計ソフトに支払った旨を記録
というようなプロセスであった。これをfreeeの経費精算機能を利用すれば、
- 従業員がモバイル・アプリやwebからレシートを写真撮影し、経費申請
- 経理担当者がfreee上で申請を確認して承認
- 各従業員への振込情報を含んだ総合振込ファイルをfreeeからダウンロードして振込
という3つのステップで済むようになる。
また、小さな会社において、請求書を受け取ったときのフローも考えてみよう
- 従業員が請求書を受け取る。内容確認の上、経理に提出。
- 経理担当者が内容を確認し、支払管理表(エクセルなど)に入力
- あわせて、会計ソフトに「買掛金や未払金」として入力
- 支払日に銀行にて振込を登録
- 会計ソフトにて買掛金や未払金を消し込み
- 支払管理表のステータスを変更
このようなプロセスも、freeeのファイルボックス機能を利用することで下記のように単純化される
- 受け取った請求書をスキャンしてfreeeに登録(モバイルから撮影も可能)
- freeeのOCR(スキャンした請求書の自動読み取り機能)の補完を利用して、請求内容をfreeeにほぼ自動で登録
- 支払日に振込用のファイルをfreeeからダウンロードして支払
10月には、「クラウド給与計算ソフトfreee」として、freeeの給与計算機能をリリースした。これも同様に従来の業務を考えてみると、
- 従業員の情報を人事担当者(や経営者)が取得して記録
- 毎月、従業員の勤怠情報を記録(タイムカードなど)
- 人事担当者が毎月の勤怠情報を集計
- 人事担当者が各従業員の給与額、源泉所得税、社会保険料を計算
- 人事担当者が給与明細を作成、印刷、リアルで配布
- 経理担当者が銀行から各従業員に支払
- 経理担当者が会計ソフトに記録
これをfreeeでは、
- 従業員が、自分の情報をfreeeに登録
- 従業員が、毎月の勤怠情報を集計
- 人事担当者が、ワンクリックで給与明細を作成、オンラインで配布、銀行支払ファイル作成、会計ソフトに記録できる
と大幅にプロセスをカットすることができるのだ。
このように、単に会計ソフトへの記録をラクにするという発想ではなく、経理周辺の業務プロセス自体を大幅に改善し、小さなビジネスのメンバー全員がより効率的に働ける環境をつくろうというコンセプトがfreeeの掲げる「バックオフィス最適化」の趣旨である。
このコンセプトをしっかり実現するためには、モバイルでの利用を簡便化することが不可欠であり、モバイルのファイルボックス機能(領収書や請求書などの画像ファイルをアップロードし、OCRにて読み取り、取引に紐付けができる機能)や経費精算機能を中心に2014年には大きな進捗があった。
特に、小さなビジネスであればあるほど、多様な働き方をサポートする必要がある。freeeではそのような多様な働き方をサポートするため、モバイルでのユーザビリティについても大きく投資をしている。
3. さらに大きな価値を提供する freee のエコシステム
freeeのミッションは「スモールビジネスに携わるみんなが創造的な活動にフォーカスできる」ようにすることであるが、そのために必要なものすべてを freee が提供できるとは考えていない。経営者にとって、より身近な専門家の知恵やサービスが必要な場合や、部分的に他のツールを利用したい場合なども多くあると考えている。
そんな場合にも freee は他のパートナーやツールとのオープンな連携をサポートするプラットフォームとして活用いただくことで、これまでにない利便性を提供することを目指している。
まず、全国の会計事務所・税理士事務所を対象として、freeeを活用したサービス提供を支援する「freee 認定アドバイザープログラム」では、会計事務所を支援すべく、ほぼ毎日の体制で研修プログラムを実施し、すでに600を超える会計事務所にアドバイザーとして登録をいただいている。
クラウド会計ソフトは、会計事務所等外部のアドバイザーとスモールビジネスが共同作業をするのに最適なツールである。場所が離れていてもインターネットを介して同じデータを見ることができるため、コラボレーションが簡単になる、データが即反映されるなどのメリットがある。最近では、「外部のアドバイザーにお願いしている毎月の財務状況のレポートを、freeeを活用することにより早く確定させたい」というニーズが非常に増えている。
また、外部ツールとの連携も、freeeは当初よりオープンなAPIを提供することで積極展開をしているが、2014年には新しく18 の連携も追加し、銀行やクレジットカード明細との連携以外にも幅広い自動化が大きく進捗した。リクルート社のPOSレジアプリ「AirREGI」や、スマホ決済の「square」、Google Apps 連携などは特に好評だが、請求書ソフト、ECプラットフォーム、決済代行、税務ソフト等さまざま連携が広がっている。
4. チーム拡大とその舞台裏[l]
一昨年末、freeeのスタッフは12人程度であった。昨年で累計17億円を超える資金調達により積極投資をおこない、2015年開始時点ではスタッフは総勢90名を超える陣容となっている。ソフトウエアとサポートをあわせて freee というサービスであり、このソフトウエア開発を支える開発チームと、お客様に迅速で的確なサポートを提供するカスタマーサポートチームを大きく拡充した。よって、1-3月の会計ソフトの大きな需要期においても盤石な体制でサービスを提供できる体制を整えることができた。
開発チームは、ゲーム業界などでの経験を磨いた優秀なエンジニアと、業務アプリケーションに造詣の深いエンジニア、グローバルカンパニーのUXデザイナーやデータサイエンティストがチームを組み、高速で新機能追加と改善を果たしてきたことに対して、大きな注目をいただいた。昨年夏には開発者向けの雑誌「WEB+DB PRESS」にて、freeeの開発の舞台裏が特集としても取り上げられた。
サポートチームは、経験に秀でたコアメンバーによって運営されており、マイクロソフトやGoogleなどのテクノロジーカンパニーや大手金融機関のサポート体制を構築してきたメンバーや、公認会計士試験合格者や中小企業経理の長い経験を持つメンバーが中心となっている。カスタマーサポートというオペレーションのプロフェッショナルと、経理業務のプロフェッショナルが見事に融合したチームでサービス提供をしている。
これらの急拡大においては、意思決定における共通認識をもつことが、組織のチームワークを最大化する上で、非常に重要になる。以前このブログでも書いた価値基準の決定プロセスはメンバーの共通認識を取ることにおいて大きく役に立っている。
このようなチームを築くため、昨年6月には現在の五反田オフィスに引っ越しをした。以前のオフィスの4個分以上のサイズの新オフィスは、全員が顔をあわせる1フロアで、全社ミーティングや外部イベントにも使えるゆったりしたリフレッシュスペースを備える。そしてこの新オフィスは昨年大きく話題も呼んだ。
このような急成長を支える裏側には、もちろんクラウドサービスの活用からも恩恵を受けている。会計ソフトや給与計算ソフトの自社利用はもちろんのこと、freeeは何から何までクラウドサービスを利用してできている。カスタマーサポートや採用などにもクラウドを活用することはもちろん、珍しいところでは従業員との契約までクラウドの電子署名を利用している。現在も、freeeには経理や人事の専任がいない体制で事業に望んでいるが、そのような身軽な経営ができるのもこのクラウドサービスのお陰である。新しい考え方を世の中に提案するには、自分たちがまずその考え方の徹底的な実践者にならなければならない。
5. スモールビジネス向けクラウドサービスの活性化
最後は外的要因ともいえるが、freee がリリースされた 2013年3月から2014年の3月にかけて、日本の中小企業におけるクラウドサービス利用率が15%から23%へ 8 ポイントもアップした。(平成25年・平成26年通信利用動向調査より、売上5億円以下の企業対象)
これはもちろん freee による直接的なインパクトも含まれるが、日本においてさまざまなジャンルにおけるスモールビジネス向けのクラウドサービスが活況を呈してきていることが大きい。例えば、freee が以前優勝した、スタートアップのデモイベント Launch Pad においても、スモールビジネス向けのクラウドサービスは2年前は freee くらいであったのが、前回の Launch Pad においてはいくつもファイナリストにノミネートされた。
他にも、POSレジ、予約管理、企業支援、マーケティング支援、販売管理などさまざまな分野で急成長のクラウドサービスは多く出てきているし、クラウドストレージなどは急速に普及している、業界全体が大きく活性してきているのだ。
僕が freee を立ち上げるにいたる最も大きな目的は、「日本のスモールビジネスにおけるテクノロジー活用の促進と生産性向上」であったから、freeeがこのようなトレンドをつくる一つのきっかけとなれたかもしれないということは、ビジネスを超えて非常に喜ばしいことだ。
もちろん、こちらのクラウドサービス利用率は米国では59%ともいわれており、日本においてまだまだ成長の余地は大きい。そして、野村総研の調査によれば、日本のスモールビジネスが米国並みにクラウドサービスを活用することで、およそ6兆円もの経済効果があるともいわれている。このような便益を実現すべく、日本の中小企業の生産性向上に貢献できるよう今年も全力をつくしたい。
さいごに
このようなかたちで、皆様に支えられてfreeeは2014年も素晴らしい成長をとげることができた。もちろん、目指していたところで達成できなかったこともある。より、多数のお客様にわかりやすくお使いいただくためには様々な試行錯誤も必要で、その中で様々な施策のすべてが成功する訳ではなかった。ただ、そのような失敗も含め、さまざまなことを学ぶことができたことも2014年のfreeeの大きな収穫であったと思う。
あらためて、freee を昨年支えてくださった皆様に大きな感謝の意を示すとともに、2015年もfreeeがさらに全力で新しい価値の提供に取り組むことを誓いたい。通常はこういった年始のご挨拶では、方針など示すことが通常であると思うが、ひとまずは1-3月の繁忙期に最高のサービスを提供することがもっとも重要で、僕達はそこにフォーカスしていきたいと考えている。
皆様、今年も一年、 freee のよりよいサービス提供につき、忌憚ないご指導およびご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。