freeeの組織力を最大化する工夫はトイレから

組織としてもどんどん成長していく freee。去年の今頃は、まだ10人にも満たないメンバーで、ワンルームマンションの1室で事業を運営していたfreee。1年足らずでメンバーは50人を超え、急激に拡大してきた。特に大きかったのが意思決定の問題だ。

「この場合、どうしましょうか」

「◯◯はどっちでいきましょうか」

組織が小さければ、そんな会話は簡単にカジュアルにできるし、僕が決めたり、僕が直接いろいろな意思決定に関与することが簡単だった。ところが優秀なメンバーが揃って、高速でものごとを進められるようになると、そうはいかない。決めるべきことは指数関数的に増えていき、決めないことによるロスが増える。

この問題を解決し、組織力を最大化するには、みんなが素早く意志決定をして物事を進めることが最も重要だ。そして一方で、みんなの意思決定がfreeeらしいということももちろん大事なので、そんなよりどころとして、freeeの価値基準というものをセットした。

実際にこの価値基準が実効性を持つようになるまでには、試行錯誤が必要で、いきなりうまくできた訳ではなかった。ここでは、そんな試行錯誤のプロセスと、そこからの学びを紹介。もちろん、これはまだ完璧ではなくて、引き続き思考錯誤を進めるべきものだと思う。

  • スタートアップらしく全員参加でやることに意味があった
  • キャッチフレーズ化することに強い効果があった
  • 伝える場所はやっぱりトイレが一番いいっぽい

試行錯誤のプロセス

社会人になってから、僕は4つの会社で働いたことがある。いずれの会社にも、すでに経営理念や行動規範や価値基準のようなものがすでに存在していて、特にそれについて疑問にも思ったことがなかった。

今後さらにfreeeチームを拡大していくにあたり、組織のエッセンスをカタチにしておきたいと考え、価値基準をセットしようと考えた僕は、まずなんとなく役員メンバーに僕のまとめた価値基準案のようなものを見せ、フィードバックをもらい、それをチーム全員に共有した。

ところが、これがあんまりうまく浸透しなかった。。。

単純に、言葉として難しすぎて覚えられなかったり、そこに込めた真意がかならずしも理解されていなかったりということがある一方で、例えば「エンジニアのためにあるようにしか見えない」といったように、一部の人にしか関係ない印象も与えてしまっていたようだ。

こうして中途半端な状態になってしまった価値基準を再建すべく、社員合宿のアジェンダのひとつとしてスタートアップらしく全員でこのテーマについて議論してみることにした。グループに分かれて、価値基準について議論をしてみると、「特にみんなに理解されていないポイント」や「皆が誇りに思っている部分」、「逆にみんなが足りていないと思っている部分」が明るみにでてくる。

そのような発見を元に、委員会を結成。「UXは風土そのもの」を掲げる関口さんが座長として取りまとめてくれた。この時点でもう一点、「言葉として、覚えやすく、キャッチーで、意味を連想しやすいものであるかどうかで浸透度に差が出ている」ということも発見し、5つの価値基準の定義付けをこの委員会で作成した後、それぞれの価値基準のキャッチフレーズを全員アイデア出し必須で募集した。

ここででたアイデアを元に、最終の言葉の整理。結果として、下記のようなfreeeの価値基準がセットされた。

freeeの価値基準: 2014年7月改訂版

1. マジで価値ある?: ユーザーにとって本質的に価値があると自身を持って言えることをする。

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当初は固かったこのセンテンスには、「マジで価値ある?」のキャッチフレーズが添えられた。これによりいろいろな場面で、「これってマジで価値あるの?」「スミマセン、これマジで価値ないっす?」という会話が沸き起こるようになり、大幅な改善。

freeeはリリース前に、いろいろとポテンシャルユーザーにヒアリングしたが、「入力が速くできる会計ソフト」へのニーズはあるものの、「入力がいらない会計ソフト」に対してはイマイチ反応がよくなかった。心折れそうになりながらも、「本質的に価値がある」ということをよりどころに全自動のクラウド会計ソフト freee (フリー) としてリリースを敢行したことに大きな意味があった。この「マジで価値ある?」精神を忘れないようにしたい。(さらに略語でmajikachiというのもある)

2. アウトプット思考:まずアウトプットする。アウトプットしながら考え、改善する。

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こちらは当初、「とりあえず、アウトプットすればOK」というようなかたちで浸透してしまった。重要なことは、アウトプットしながら考えるという部分。これまでも、「まず、アウトプットしますか」みたいに語られていたのが、造語として「思考」とお尻につくことで、「では、この件についてはアウトプット思考で行きますか」ときちんと「思考」までが語られるようになって、実際に思考して改善するプロセスまでを意識できるようになった。

freeeの取り組む課題は、複雑で難しい。アウトプット思考で進めなければ、何も産まれない。

3. Hack everything:なんでもハックする。みんなが楽しく生産性をあげられるように。

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不正侵入という意味ではなく、クリエイティブにいろいろなツールなりノウハウを使いこなして楽しく生産性をあげようという意味での「ハック」。社内チャットに仕込まれたボットが開発チームのプロジェクトマネージャーのように振る舞ってくれる仕組みなどが代表的だが、開発プロセスにおいても、カスタマーサポートやマーケティングのプロセスにおいても関係しそうなことを徹底的に勉強してクリエイティブに使いこなす精神は、バックオフィスの自動化をめざすfreeeにとって非常に大事な精神だ。

4. ハイパー目標:「今の自分だけ」では達成できない高い目標をセットする。

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ついつい人は「今の自分」をベースに目標をセットする。常に非連続的成長を求められるスタートアップでは、これではダメ。「自分が成長すればできそう」とか、「チームで協力したり、新しくチームつくればできそう」とか、現在ないリソースも想像して高い目標を立て、それを実現していかなくてはいけない。

これは当初、闇雲に高い目標を立てようという意味で理解されてしまっていたが、「ハイパー目標」という意味不明な言葉に、しっかり定義付けをすることで、「語られる」フレーズに昇華することができた。

5. かたまりだましい:周りを巻き込み・巻き込まれることがハイパー目標達成の鍵

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ひとりひとりの視点には必ず偏りや盲点のようなものがあるため、いろいろなインプットを得ることで意思決定の精度があがることはさまざまな実験で証明されている。そして、なにより、1人でできることは限られているし、かっちりした組織という訳でもないので、うまくかたまりをつくっていって最大活用することが大事。これが、ハイパー目標達成のためにもひとつのカギになる。

いいプロダクトを置いておくということではなく、しっかりとコミュニケーションするというチームワークで実績を残すことができたfreeeのエッセンスのひとつ。

(でもスミマセン、キャッチフレーズはゲームの名前を採用。ここはアウトプット思考でね。)

そして運用

こうしてアップデートされた価値基準は、トイレに掲出され、みんながリラックスする時間に目に触れることになった。

今回、価値基準は大幅にブラッシュアップすることができ、意義深いものになったと思う。

まず、全員が関与してつくったものであるから、当然覚えやすいし、覚えるだけではなく、そこに込められた意味についての理解がしやすい。こういったものは全員が理解してはじめて意味をなすものであって、文字面だけ存在していても理解がずれていては意味がない。

そして次に、意識をされなければ意味がない。freeeのメンバーがこの5つを意識してなされた意思決定であれば、そうそう外れないだろう、というのがこの仕組みをうまくいかせる上での重要な前提だ。今回アップデートした価値基準は、会話に組み込みやすいので、自然と会話に組み込まれ意識されやすくなっている。「これ、マジで価値ある?」とか、「じゃあ、アウトプット思考でいこう」とか、「ハイパー目標立てました!」など。会話として使われるようになれば、意識されているということになる。

組織は常に進化していくべきで、こういったものも現在のところの最適解にすぎず、さらにチームや事業が拡大していくにつれ、どんどん見直されるべきだ。でも、こういった価値基準さえもオープンソース的にみんなでアップデートしていけると骨太な組織になっていけるのではないかなと考えている。

学び

「会話に組み込まれる」ような価値基準を設定して、意思決定をスムースに。

freeeの組織力を最大化する工夫はトイレから」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 【freee設立5周年】マンションの居間から始まった急成長の軌跡を振り返る | クラウド会計ソフト freee - 佐々木大輔のブログ

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