世界の66のFinTech (フィンテック) サービスから見えた FinTech がもたらす未来

finance

最近 FinTech について聞かれることが非常に多くなってきた。聞かれることは書いてみようと思い、それを機に少し世界の事例もまとめてみた。起業する前にも見て、最近どうしているかを改めて知った例なんかもあって非常に面白かったので、クラウドサービスやスモールビジネスという視点でも今後書いてみたいと思う。

FinTech(フィンテック) とは何か

Wikipedia によれば以下のように書かれている。

Financial technology, also known as FinTech, is a line of business based on using software to provide financial services. Financial technology companies are generally startups founded with the purpose of disrupting incumbent financial systems and corporations that rely less on software.

“Finantial technology (フィンテック とも呼ばれる) とは、金融サービスを提供するためのソフトウエアを利用したビジネスを指す。FinTech 企業という際、多くの場合は既存の金融システムやソフトウエアを活用しきれていない既存の金融機関を disrupt すべく設立されたスタートアップを指す。”

少し前の時代には、FinTech といえば、金融機関が利用するようなバックエンドのシステムを指していたそうだが、2000年代後半以降、既存の金融システムにとってかわる新しい動きが出始め、そういった動きが FinTech とよばれるようになってきたようだ。

そして、2014年には、FinTech スタートアップに対するベンチャー投資額が前年度比3倍にまで増加し、まさに FinTech への注目が加速している。P2Pレンディング、自動投資顧問サービス、資産管理ツール、新しい決済手段など多くの新しい領域が形成され、世界レベルで競争が加速している。

なぜ今 FinTech なのか

なぜ今 FinTech なのか。2000年代の後半から徐々に広まり、ここへ来て爆発している背景を考えてみたい。

コンピューティングのローコスト化

server

まず言えることとしては、コンピューティングのコストが圧倒的に低下しているということだ。具体的に、、、とも言われる。単純に、サーバーやストレージのコストが下がっているということに加え、Amazon Web Services (AWS) のようなクラウドコンピューティングサービスが金融サービスの分野でも活用できるようになったことが大きい。このため、ソフトウエアさえ開発できれば、ほぼハードウエアの初期投資なしに様々なサービスが提供できるようになるのだ。

特に、金融サービスの分野では、高いレベルのセキュリティが求められるため、データセンターへの投資などは非常に大きなものが求められていたが、近年では AWS のようなサービスが高いセキュリティレベルを担保し、実績としても信頼感が持てるようになってきていることは、FinTech 進展の礎として非常に重要なファクトである。

日本でも、AWSが金融機関に求められるセキュリティ基準を満たすことが確認され、発表されているし、ヨーロッパでは、金融関連当局から公認されている国もある。また、米国においては、国防総省においても、6段階のセキュリティレベルのうち、5段階目までの情報はAWSを利用して取り扱いできることになっている。

このように、高いセキュリティレベルを確保したコンピューティングリソースが初期投資なしに活用できるようになったことで、金融サービスにおいてもスタートアップが入り込み、さまざまなイノベーションに挑戦することが経済的に可能になったのである。

また、FinTech では、取り扱うデータ量が多かったり、機械学習や人工知能などコンピューティングコストが非常に高いアプローチを前提とするサービスも多いが、こういったことを実現するためのインフラのコストが落ちているという点も、イノベーションを加速する要因となっている。

スマートフォンの浸透

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次に、スマートフォンの浸透も重要な背景である。もちろん、「i-mode」のリリース時にモバイルバンキングは鳴り物入りのフィーチャーのひとつであり、これが「はしり」であることは間違いない。しかし、スマートフォンの浸透は、金融サービスにおけるイノベーションを加速させる重要な契機となった。

まず、スマートフォンの浸透は、さまざまなサービスのクラウド化を加速させた。スマートフォンやタブレットの利用が高まれば、「PCで見れるものはモバイルからも見れる」というのが当たり前になった。このため、情報がクラウド上にあることがデフォルトとなるというシフトが起きた。

次に、スマートフォンはアイデンティティの役割も担うようになった。肌身はなさず、利用されることが想定されているスマートフォンの場合、スマートフォンを活用した本人確認や認証は、高いセキュリティレベルが求められる金融サービスの提供において非常に使い勝手がよいのだ。

最後に、スマートフォンの浸透は、テクノロジープロダクト利用の裾野を大きく拡大させた。例えば、スモールビジネス(個人事業や中小企業)では、例えば飲食店などのようにあまりデスクワークを行わないようなビジネスも多い。そして、一般の消費者としての生活で考えれば、居間ではPCを開けるのはちょっと大掛かりというのもあったであろう。しかし、スマートフォンやタブレットの浸透により、このような場合でもより身近でテクノロジーを活用できる機会が圧倒的に増えた。それにより、FinTech 利用に対するニーズも一部のデスクワークの人々だけでなく、世の中全般に一気に拡大したのだ。

他業種でのイノベーションによる「ひずみ」

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そしてまた、他業界において、さまざまなイノベーションが起き、圧倒的に高いユーザーエクスペリエンスが実現され、ユーザーであるビジネスやコンシューマの期待値が非常に高まった。それにより、金融サービスによって提供できているものと、ユーザーからの当然の期待に対して大きなギャップができたというのも FinTech の背景として大きな重要だ。

Facebook, LINE, whatsappなどにより、コミュニケーションが変わった。例えば、友人に待ち合わせの店を教えるのがどれだけ簡単になったか。Dropbox や Box や Google Drive により、もはやメールにファイル添付の必要がなくなった。Gmail でメールボックスの容量を気にする必要はなくなった。YouTube や Spotify や Apple ミュージック や Kindle などで、音楽や書籍を圧倒的に簡単に楽しむことができるようになっている。現在の金融サービスは、これらのサービスが提供するエクスペリエンスに匹敵するレベルなのだろうか?

また、FinTech を刺激する動きとして、Uber や Airbnb といったシェアリングエコノミーの台頭は無視できない。オークション原理の活用、レビューを活用したリスクのコントロールといった、インターネットの力を利用してマクロ原理に立ち返り、これまでの歴史の中で短期的に常識とされていたものを切り崩し、よりよいユーザー・エクスペリエンスを実現した。この考え方はさまざまな FinTech ビジネスモデルに応用できるであろうし、Uber や Airbnb は突き詰めると業界に特化したユーザー・エクスペリエンスの高い決済システムと見ることもでき、そもそもこれらも FinTech なんじゃないかという見方もある。

FinTech の類型

では、FinTech にはどのようなビジネスがあるのだろうか。金融サービスの定義に立ち返ってまずは考えてみたい。

“1国内の政府・地方公共団体・事業法人・金融法人・非営利法人などの組織から個人に至るまで、あるいは国境を越えて異なる通貨単位間で為替を通じて国外の諸経済主体との間で、さまざまな経済主体が資金を調達し使用することによって生じる、経済の資金流通全体のことを指して「広義の金融」と呼ぶ。総称して「金融システム」と呼ばれることもある。また、空間上の資金の流れを指す「為替」に対する概念として、時間上の資金の流れを指して「金融」と称される場合もある。 (Wikipediaより)”

ここで、FinTech の対象領域を「広義の金融」をとらえた場合、大きく考えると金融サービスには3つの領域があると考えられる。

  • 時間的なお金の流れを担うもの – 投資・調達
  • 空間的なお金の流れを担うもの – 決済・為替
  • 経済主体のお金を管理するもの – 資金管理

それでは、具体的に世界中の FinTech で、どのようなサービスが存在するのかを類型にしたがって見ていこう。

時間的なお金の流れを担うもの – 投資・調達

まず、「狭義の金融」とも呼ばれる、いわゆる資金の融通に関するイノベーションを紹介したい。これには、一時的に余剰な資金を持っている人が「投資や運用」を行い、資金ニーズがある人が「資金調達」を行う。その手段としては、融資、債権、株式などいろいろな手法があるが、これまでの銀行や証券会社を前提とした手法に置き換わるプロダクトが登場してきている。

利便性の高いローン

利用するデータやプロセスを簡素化し、高いユーザー・エクスペリエンスや金融プロダクトとしての価値を実現

  • OnDeck – SMB向けの簡素化されたローン
  • Kabbage – 会計ソフトのデータやSNSのデータを利用して融資するSMB向けローン
  • Borro – オンライン質屋。高級品とかを担保とする。
  • Kreditech – ビッグデータ活用による個人向けローン
  • Nimble – 短期ローン(少し日本の消費者金融に近い)

P2Pレンディング

ローンを借りたい人と資金を運用したい人を直接マッチングし、オークション形式などで結びつける。与信審査などはプラットフォームが行う形式となっている。

クラウドファンディング:

株式投資型、社債型、購入型などがある

  • Ourcrowd – イスラエルの株式型クラウドファンディング
  • CirclesUp – コンシューマープロダクト専門の株式投資型クラウドファンディング
  • Angel List – リードインベスターとしての エンジェル の投資にシンジケートとして参加できるエンジェル投資のプラットフォーム
  • CrowdCube – 株式と社債でのクラウドファンディング (大好きなBrewDogに投資できるのでぜひやりたかったが、日本からは使えなかった)
  • Seedrs – 株式投資型
  • Kickstarter – 購入型

トレーディング

証券の売買についてのサポートツール

  • Robinhood – 手数料ゼロのモバイル特化型オンライン証券
  • Motif – 特定銘柄ではなくアイデアやコンセプトに投資するプラっとフォーム
  • eToro – ソーシャル投資ネットワーク。いい投資家の投資をコピーできる

保険

保険も重要な金融プロダクト。ただ、まだ FinTech としては未開拓な感じがする領域

  • Oscar – 医療保険と病院検索とヘルストラッカーがセットになっている。歩いた歩数でインセンティブもある
  • Marmarade Insurance – 運転の仕方をトラッキングする機能付きの保険

空間的なお金の流れを管理するもの(決済・為替)

次に、空間的なお金の流れとして捉えられる、決済や為替の手段におけるイノベーションについて捉えてみたい。経済主体同士で取引を行う際には、通常は資金の決済が伴うし、または海外の家族に送金をするというニーズもある。決済の手段にはどんなイノベーションがあるだろうか。

スマホカード決済:

Squareに始まったモバイルデバイスを活用したカード決済受付手段。日本では、楽天スマートペイやCoiney、Air ペイメントなど。

  • Square – モバイルデバイスでのクレジットカード決済
  • SumUp – ヨーロッパにおけるSquare
  • flint – Square のように別途端末を必要とせず、スマホのカメラから利用できるクレジットカード決済

新興決済手段:

カードなどに変わる新興決済手段。日本ではLINE Payなど。

  • Dwolla – モバイルデバイスにひもづく決済手段。手数料が非常に低い。ホワイトレーベルでの提供も開始した。
  • GoCardless – 口座振替支払プラットフォーム。加盟店は、口座振替により簡単に決済を受け付けられる。
  • m-pesa – モバイルデバイスに紐づく決済。ケニアではGDPの50%がこのm-pesaによる取引といわれる。
  • Klarna – e-commerce 向けの、配達完了後に実際に決済する決済手段。
  • PayNearMe – 現金払いでe-commerceを実現する決済手段。日本のコンビニ払いと同等。
  • AstroPay – プリペイドのクレジットカード。カード詐欺の多い新興国で人気。
  • ZipMark – スモールビジネス向けの電子小切手
  • Apple Pay – iPhone での決済
  • Venmo – 簡単に割り勘などができる個人間決済アプリ。Acquisition により Paypal 傘下。

API:

開発者向けに決済システムの構築や支払いシステム構築を楽にするもの。日本ではWebpayなど。

  • Stripe – 開発者フレンドリーなカード決済実装用API
  • Tipalti – 世界中への支払いに対応した支払い用API

海外送金:

これまでの海外送金の手数料は高すぎた

Bitcoin:

すでに決済手段として実用化しはじめている

  • CoinBase – Bitcoin によるデジタルウォレット
  • Bitpay – Bitcoin を利用した決済代行
  • epiphyte – 銀行がbitcoinをあかえるようにするためのバックエンド

経済主体のお金を管理するもの – 資金管理

経済主体の資金の動きや資産や負債の状況を管理することも大きな課題である。自分たちの状況を知ることはよりよい意思決定をする第一歩であるし、状況を知ることによって付随して自動化できる意思決定もあるだろう。スモールビジネスの財務をサポートする freee も、まずはこの機能を担っている。

自動化された投資顧問サービス:

低料金でアルゴリズムによるプライベート・バンキングサービスが利用できる仕組み。米国では現在乱立するモデル。証券口座などと同期し、設定したゴールにしたがってベストな投資ができる。日本では、お金のデザインやWealth Naviなど。

ビジネス向け資金管理ツール:

まさに freee のいる領域。

  • Quickbooks Online – SMB向けクラウド会計ソフト(US)
  • xero – ニュージーランド発、クラウド会計ソフト
  • wave accounting – カナダ発、クラウド会計ソフト
  • Freshbooks – 請求書ソフトに会計機能が付加されたフリーランス向け
  • Bode Tree – SMB向けのビジネス・インテリジェンスツール
  • TradeShift – 取引先と購買管理

パーソナルフィナンシャルマネジメント(PFM):

日本では、マネーフォワードやMoneyTreeなど。

  • Mint – 自動家計簿の元祖。アカウント・アグリゲーションに加え、予算管理や支払い予定の管理機能がある。
  • BillGuard – カードなどの不正利用のトラッキング機能がついたアカウント・アグリゲーションサービス
  • Level – 予算管理アプリ

クレジット管理

フィナンシャルプランニング

  • PlanWise – 不動産購入に特化したプランニングツール
  • LearnVest – 個人用フィナンシャルプランニングツール

カード・リンクト・マーケティング:

クレジットカードの利用履歴を利用したマーケティング・ソリューション。日本ではカンムなど。

  • Cardlytics – カードリンクトマーケティングのプラットフォーム
  • CardSpring – カードにリンクしたアプリを簡単に開発できるSDK

FinTech によって何がかわるのか

FinTech がもたらす流れとして、まず上記の3分類の融合が続くとかんがえられる。例えば、Square Capital などは好例だ。Square が、加盟店のキャッシュ・フロー・データを利用して融資を提供する仕組みであるが、例えば決済のようにお金の流れを司るツールであれば、それを利用して、与信を提供することができる。資金管理のツールも同様だ。

とどのつまり、金融とはデータのビジネスである。僕が学生時代にデータサイエンスに興味を持ったきっかけもまさに金融工学であった。金融サービスは、例えば、Uber や Airbnb と異なり、キャッシュ以外に一切リアルのインタラクションを必要としないサービスである。そしてまた、高度に信用が進化した現代においては、現金の存在自体の意味もどんどん薄くなりつつある。

すべてがデータなのだとすれば、金融サービスはもっともテクノロジーと相性がよい業界である。取引自体がどんどんデータ化することで、世の中の生産性がアップするとともに、人工知能などと相まって、より最適な金融プロダクトができていくだろうし、経済原理によって、あらゆることが最適化されていくだろう。

本当の意味で、経済原理がリアルタイムで働いていく時代がくるのだ。

freee と FinTech

最後に、freeeがどのようにFinTechとして価値を産んでいくのか、その構想に触れたい。

freeeは現在のところ、主にビジネス向けの会計ソフトを提供しており、ビジネス向けの資金管理を司り、それを自動化し簡便化している。しかし僕達が実現したいことは、「スモールビジネスに携わるみんなが創造的な活動にフォーカスできる」ことであり、ビジネスにとっては難しい資金繰りなどファイナンス上の課題解決が自動化されたり、取引を行うにあたり必要なプロセスがすべて自動化される未来をつくることができると考えている。もちろん、実現するにはテクノロジー的にもビジネス的にも面白いチャレンジがいっぱい待っているだろう。

みんながイノベーションであったり、人間的な時間の過ごし方にフォーカスできる時代が今すぐそこにきている。2010年代後半は、とてもエキサイティングな時代となるに違いない。

 

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